17人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の、そういうところが嫌いなんだ」
「なによ……私は、仕事で疲れて帰ってくる貴方のために、こんなにも尽くしているのに」
愛の精霊がいるといわれている、ハートの葉をつけた大樹がある森で、男女が言い争いをしている。
この光景は、何度も目にしていた。
女の人間が、なぜか何もない草原で倒れかける。もう1人の女の人間……私に似せた人間が、背中を押した。もちろん、物理で。
私も、人間に見えないことをいいことに毎回物理で、ただ押していた。
「きゃっ……」
「大丈夫か!? ここは、少し坂になっているんだ……危ないだろう」
「あ、有難う……あなた」
2人は先ほどの喧嘩も忘れるほどに、繋ぎ合った手を互いに腰に回して抱き合う。
話は、30分ほどで終わった。
人間の物語を見たのも初めてだったが、正直……ほとんど正解で驚いている。
私たち精霊は、人間には見えないはずなんだけど、それだけ私は同じことを繰り返しているのだろうか。
「あっという間だったね。僕も、絵本では読んだことがあるんだけど、あれが本当ならとてもユーモアがある精霊だよね。おかげで、僕たちは繁栄したようなものだけど……」
最初のコメントを投稿しよう!