16人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
ヒスイに誘われるまま表通りに戻ってきた私は、食べ物を口にしている。
精霊の私には、人間の食べ物だけでなく、自然の物、水すら口にしなくても支障はない。
そのため、人間の主食も100年ぶりに食べる。
ヒスイがお勧めだという、色とりどりの野菜が入った食べ物だ。
私は、生き物を食べられない。生き物を口にしたら吐いてしまうほど敏感だ。
「……とても、おいしい」
「そうだろう? 気に入ってくれて嬉しいよ。まさか、菜食主義だとは思わなかったから。実は、僕も野菜や果物の方が好きなんだけど、肉や魚も食べないと丈夫な身体が作れないと教わってね。おかげで、元気に成長したけど」
人間は、思ったより大変な生き物らしい。動物には草食動物も多くいる。それらは、肉や魚を食べなくても元気だ。そう思うと、人間を構成している肉体は、本当に脆いのかもしれない。
ヒスイとの話は尽きなかった。主に、話をしているのは彼なんだけど。
いつの間にか、私と同じ色の空模様は消え、橙色の輝きが空を照らしていた。
最初のコメントを投稿しよう!