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その表情からは近づかないようにしようという意思がみえた。
僅かな変化だが、ハートの葉をつけた大樹も、どことなく他人にみえる。
この言い表せない感情が、楽しい……には絶対に結びつかないことだけは理解できた。
「……これは、とても、楽しくない……」
私は再び、日がな一日を過ごしている。
約束を破られてから、まだその日ではないから、彼は森には来ていない。
会う約束をしていない日なのだから、当然だけど。
私は、新たに生まれた感情で複雑だ。
とても楽しくないこの感情は、いらない。人間は、この感情とどう向き合っているのだろう。
次に約束した日は、ヒスイが来てくれると私は信じるしかなかった。
町に行けば、会えるかもしれないし、名前を知っているのだから、聞けば教えてくれるかもしれない。
でも、楽しいという感情を1000年以上生きてきて、人間を知ったあの日から、初めて芽生えたものを、私は、少しずつ時間をかけて見守りたいと思った。
だから、町にいくのは、早計だと思う。もしも、次の約束も破られたときは……そのときに、考えることにした。
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