愛の精霊

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 病気は無理。寿命も自然の摂理に反する。天災くらいは助けてあげてもいいかもしれない。  私にとっては些細なことだった。  ここには、遊ぶ場所が少ないのか、私のいる森がキレイだからか……森に訪れる人間が多くいる。  最初は、街を築く際に、森を壊して平地を更地にする野蛮な生き物だと思って警戒していた。  でも、私の棲む森は、この近くでは一番キレイで、動物や花も多く生息している。  ハート型の葉をもつ、私のお気に入りの大樹も、私が生まれて目覚めてからずっと一緒だ。  それで、その大樹の前にはよく男女の人間が訪れる。前に聞いた、子孫を残すために育む恋人たちらしい。  関係の進まない恋人たちを見て、後押しした。結構、物理的に……。  そうしたら、いつの間にか愛の精霊と呼ばれていた。  栗色の短髪、白い肌、空色の瞳、街の青年だと分かる容姿。それに帽子を被る。  昨日降った雨でできた、水溜まりで最後の確認をした。  私は、100年ぶりに人の形を模して、祭りに参加する。  祭りの名前は『愛の祭典』
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