~愛の祭典~

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~愛の祭典~

 心地の良い風が頬をなで、髪をなびかせる空の色は青。  今日は、暖かい晴れの日だ。  活気だつ小さな街は、青を基調とした屋根で統一されて、私の瞳に近いことで気に入っている。  町の門は常に開かれていて、ウェルカムと書かれている少し古びた看板が飾られていた。  賑わう町と、人間の姿に心を揺さぶられることはないけれど、なんだかとても……。  私には、まだ分からない感情を、共有しているんだ。  町の中を歩いていくと、見た目が色鮮やかで、いい香りのする人間の主食。  雑貨などが立ち並ぶ店の人間は声を大きくあげて、商品を宣伝しているみたい。  人の形を模しただけの私には、空腹もない、病気もない……でも、お金もないの。  100年前の今日、私は9回目の祭りで初めての体験をする。  知らない男の人間に声をかけられたまではいい。  あろうことか、不純な遊びに誘われた。  人間のことを知らない私は、危うく騙されかけて、街の人間に助けられ難を逃れる。  その男は、祭りにきた知らない町の人間で、最低男という部類だと教えられた。
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