~愛の祭典~

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 1000年以上生きてきて、不要な経験をした私は、同じ失敗はしない。  それ故、今年の祭りでは男装をした。勿論、中身も男の青年姿である。  虚ろな目で歩き回り、一瞬だけ、瞳に映った輝きに、自然と引き寄せられるように足が止まった。  宝石を扱った店で、自分の瞳と同じ色である空色の宝石が、ひときわ輝いていたから。  人間を知らない精霊でも、知っていることはある。  自然はキレイだということ。この宝石という石は、自然の色をしていてキレイだ。  でも、決定的な現実を叩きつけられる。  ――私にはお金がない。 「私は、精霊だから。自然と一体……つまり、私はキレイだ。宝石(これ)以上に。でも、宝石(これ)もキレイ……」 「――君、お金がないのかい? 僕が買ってあげようか」  急に呼びかけれて声がする方に視線を向ける。  そこには男を模した私より身長が高くて、くすんだ銀色をした髪と、淡い森の色をした瞳をもつ青年がいた。  私は知っている。100年前に遭遇した、女性の口説き文句の1つだ。
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