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私は人間の感情が分からないだけで、頭はある。精霊は賢い存在だ。
「その手には乗らない。それに、私は男だ」
「君の、空色の瞳と同じ色で、単純にキレイだと思ったからさ」
男の姿である自分を口説くとは、同性が好きな生き物もいるのかと不思議がる私を見て、誤解に気づいた青年は、焦ることなく訂正してくる。
「ああ、誤解しないでくれると嬉しいのだけど……僕は、女性が好きな男だよ? 中には、同性を好きな人もいるけどね。なんだか、君を見ていたら不思議と、その首飾りを身に着けてほしいと思ったんだ」
私は、無言になって少しだけ考えた。
もう人の形をとらなければいいだけだ、そう自分に言い聞かせ、名前も知らない青年に買ってもらう。
私も、未だに名前がない精霊だから、名前を知らないことは、別に気にはならないけれど。
「こういうとき、人間は……確か、ありがとう。と、言うんだった……はず」
「ふふっ……君は、本当に不思議な青年だ。どういたしまして? 早速だけど、自分でつけられるかい?」
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