最終話:素直な気持ちで…

5/9
前へ
/560ページ
次へ
 「…………今日も一段と綺麗だよ」  「ありがとう、あなたも素晴らしいわ」  「では行こうか」  ヴィルは満足そうに私の手の甲にキスを落とし、馬車へと誘ってくれた。  今日のドレスも全部彼が揃えてくれたもので、ハイウェストのエンパイアラインのスカートに袖口は流れるように大きいベルスリーブで、どこかの国の王女様のようなドレスだった。  布地は白に近いベージュからピンクラベンダーへのグラデーションが綺麗で、宝石にはブラックダイヤモンドがアクセントに使われている。  プロムの会場に着いて、入場する為に入り口で待っている間、廊下では私たち2人だけだったのでドレスのお礼を伝えてみる。  「今回も素敵なドレスをありがとう。とてもエレガントなデザインで素敵だわ」  「プリンセスのようなデザインだろう?君は私のプリンセスだから……」  「もう!すぐそういう事を……」  意地悪な表情でからかってくるので、いつものように返すと、ははっと大きな口を開けて笑うヴィルを見ながら、今夜くらいは素直に自分の気持ちを言ってもいいかなと思った。  「あなたもとても素敵よ。まさに王子様ね」
/560ページ

最初のコメントを投稿しよう!

604人が本棚に入れています
本棚に追加