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何度も唇を啄ばんでくるので「……口紅がっ……っ」って抵抗をしても「黙って」と塞がれてしまう。
「まって、ヴィル…………っ……んっ……」
「……オリビア…………っ」
会場の中からは私たちの名前を呼ぶ声が聞こえた。
『ヴィルヘルム王太子殿下とそのご婚約者、クラレンス公爵令嬢が到着致しました!』
「んんっ~……!」
私の抵抗は虚しく、会場のその声とともに大きな両開きの扉が開かれていく――――――でもまだ彼のキスは終わりそうにない――――
ようやくキスから解放された時には扉は全開になっていて、大勢の貴族達がシーンとして私達に釘付けになっていた。
「……はぁ……っ……」
お互いの吐息だけが響いている気がする。
それでもヴィルは悪びれる事もなく、この状況に動揺する私に構わず愛を囁くのだった。
「愛してる」
「……っ………………ばかっ………………私も愛してるわ」
お互いに目線を絡ませて笑い合うと、気を取り直して腕を組み、入場していった。
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