ライブ前日

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ライブ前日

駅とショッピングモールは隣同士のため、建物内で繋がっている。 大学の最寄駅でもあるため、看板を見て会場まですんなりと行くことができた。 「ここか。てかよくここに会場置いたな」 そこはショッピングモール一階の入り口付近にあるイベント用の大型スペースだった。 そこに壇上やら照明やらが準備されている。 「さてさて、どこから見ようかな」 会場右手側から、機材や配置などを確認していく。 「おっ!スピーカー大手のやつ!これ片方だけで200万はするんだよなぁー。しかも、こっちの照明なんてライブ会場にも置いてあるやつだ!明日が待ちきれんっ!」 相変わらずのヲタクっぷりを発揮していると、後ろから声を掛けられた。 「まーた会場視察??」 「お姉ちゃん」 エコバッグを片手に買い物帰りのようだ。 「arc来るんだって??明日は相当混みそうだね」 会場を見渡しながら、光希が言った。 「そうなんだよ。だからさ、明日の特等席を確認してるんだよ」 「なるほどねー。てか月夜、暑い?」 そう言って光希が俺のおでこに手のひらを当てた。 「…ちょっと熱ある!」 「ち、ちょ、ま」 「薬買いに行くよ!」 光希に腕を引っ張られながら、俺は薬局へと向かった。 ーーーー 薬局は会場のすぐ近くにあった。 「たまには休息も入れるのよ?」 そう言いながら、光希は店の奥へと進んでいく。 …ここしばらく曲作ったり詞作ったりであまり休めてないなぁ。 授業もあるし、休み入れようかな。 俺は光希の後に続いた。 解熱剤ってどんなのがあるんだろ。 薬品コーナーを歩きながら、解熱剤を探す。 「解熱剤コーナー、ここか。って、…ん?」 おでこに貼るシートや解熱薬などがあるが、その中で、1つずば抜けている金額の薬品があった。 「なんだこれ」 超高級解熱薬SPECIAL EX 3錠 税込5500円 超高級ケース&ロック付き 「こんなん誰が買うんだ??」 そう思っていると、会計を終えた光希が俺に声をかけた。 「解熱剤買っておいたよ。しかも、超効くやつ。」 そう言って、袋から1つの箱を取り出した。 超高級解熱薬SPECIAL EX 3錠 税込5500円 超高級ケース&ロック付き 「…ありがとう。お姉ちゃん」 店を出て、再び会場へと歩き始めた。 あー、まだぼーっとするなぁ。 ちょっと目眩もするかな。 と、会場の目の前の曲がり角まで来たその時だった。 突然、何者かが飛び出して来た。 そしてーー 「ーーキャッ!」 「ーーンギャ!」 俺はバランスを崩し、後方に尻餅をつくように倒れ込む。 「ーーッ」 「ーーすみませんっ!」 相手の女も倒れ込んだ、がすぐに立ち上がり、目の前にあったケースを持ってすぐに走り出していってしまった。 「??????」 「ちょっと、大丈夫??」 光希が俺の方に駆け寄って来ると同時に、女が現れた角から今度は角から数人が現れた。 そして、 「おい!待て!」 と叫びながら、ぶつかった女の後を追うように走っていった。 f5681e10-1b9a-47ba-8f87-c45c15241cda …何だったんだ?? 不思議に思いながら、俺は目の前にあったケースを手に取り、立ち上がる。 「大丈夫??歩ける??」 「うん、歩ける」 「会場すぐ見て帰ろっか」 そう言って、俺は光希と再び会場へと歩いた。 ーーーー 「はぁーやっと帰って来た」 「なーんか色々疲れたよ」 俺は背負っていたリュックを床に下ろした。 「風呂入って薬飲んで寝てなさい」 「はーい」 俺は手に持っていた薬箱を机の上に置いて、風呂場へと向かった。 ーー風呂から出て、台所でコップに水を注ぐ。 そして、薬箱を手に取る。 …にしても、随分と凝ってるなこの解熱薬。 箱のデザインからケースまで、いくらかかってんだ?? 無駄に施されたケースのロックをパチンパチンと開けていく。 ーーカパッーー 上の蓋である奥側にはクッションが織り込まれており、下の蓋である手前側にはそのクッションに挟まれるように3つのカプセルが入っていた。 カプセルには数字が書かれているが、今は早く薬を飲んで寝たい。 「…早く飲んで寝るか」 俺は真ん中のカプセルをつまみ、口に放り込んだ。 ーーッ カプセルを水で流し込み、俺は布団に入った。 ーーーーンンッ のぼせるような暑さで目が覚めた。 何時間寝た?? ふと時計を見ると、時刻は20時過ぎを指していた。 買い物から帰って来たのが15時前くらいだから、5時間くらいは寝たか。 …にしても、体がだるい。 というか、さっきよりも目眩がするし、熱もある。 …あの薬効いてるのか?? とりあえず、水飲もう。 俺はリビングへ向かった。 ーーガチャーー 「あ、起きた??これから夕飯だけどどうする??」 リビングでテレビを見ていた光希が俺に聞いた。 「食べれそうにないからいらないや」 「はーい。ちゃんと寝ておくのよ」 部屋から持って来たコップで水を飲み、俺は部屋へと戻った。 ーージリリリリリリリーー 「んーっ」 いつものように手探りで目覚ましを探す。 ーーパチン 「んんんっ…??」 …なんか、声枯れた?? とりあえず喉乾いたし、起きるか。 長い髪の毛をかき分けて、目を擦る。 …ん、服伸びた?? 俺は布団を剥がし、ベットから降りて洗面所へと向かう。 …洗面所高くなった?? 寝ぼけているのが分かるくらい寝ぼけているのか。 歯ブラシの入ったコップを手に取り入れ鏡を見た。 えっーーーー ーーーーカラーンーーーー ーーーー エエエエエエエエエエエエエッッーー!!!! 「ん?どした?」 奥の部屋から光希の声が聞こえた。 お姉ちゃん!?へ、部屋に戻らねばっ! 俺は急いで部屋へと駆け込んだ。 部屋から出て来た光希が、目を擦りながらバタンと音のする方を見る。 「ーーーー????」 俺は部屋に入り、布団に潜り込む。 ーーーーコンコン 「ちょっとー大丈夫ー??」 部屋のノックと同時に光希が声を掛ける。 「うんー何でもないよー」 と謎の裏声で返事をする。 「ーーーー????、ちょっと入るよ」 ーーーーガチャーーーー 「どうしたのよ朝から叫んで。薬は効いたの??」 「うん。とっても」 「ーーーー????」 謎の間が入り、光希が布団を引っ張り始めた。 「ちょっ、何!」 「何ってこっちが聞きたいわよ!どうしたのよ!」 内側から布団を抑えるが、まるで力が入らない。 「何でもないって!!ちょ!!あっ!!」 そして、そのまま布団を引き剥がされてしまった。 あっーーーー 「ーーーーは??」 そこには、ブカブカのパジャマを着た長い髪の少女がいた。 月夜、1日目の少女生活の始まりである。
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