転身

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転身

「え、っと、どちらさん??」 姉の光希がポカンと口を開けながら、俺に質問をして来た。 「…月夜です。うん。月夜です」 「たしかに、月夜の部屋だね。そんで、君は??」 「えっと、なので、月夜です」 自分でも混乱している。というか、むしろ自分の方が混乱しているのだ。 なぜ朝起きたら少女になっているのか聞きたいくらいである。 「…」 「だから、月夜だって」 「…」 しばらく沈黙が続いた後、光希が聞いた。 「月夜の誕生日は??」 「8月8日」 「月夜の趣味は??」 「DTMとライブ」 「私の血液型は??」 「B型」 「私の誕生日は??」 「9月15日」 「…本当に月夜なの??」 「だから月夜だよ」 「…キャー!かわいーッ!!!!」 ポカンとしていた光希だが、どうやら俺が月夜だということを信じたのだろう。光希が俺に飛びついて来た。 「ちょ、お姉ちゃん」 「何で?何で?どうして?」 「知らないよ。逆に聞きたいくらいだよ。ってか、」 俺は恐る恐る、自身の体を見た。 胸が、ある。 何だ、このプルンプルンしているのは、。しかも、。 股が落ち着かない、。 おそらく、ブツが、ない。 「ハァァァァァァァ…!!」 俺は再び布団に潜り込んだ。 「ちょっと、潜り込まないでよ 、月、夜、ちゃん??」 「ヒャァァァァァ」 しばらく謎の発狂が続く。 ーーーー 「というか、何か覚えない??」 と光希に聞かれ、少し昨日の記憶を探る。 「んー、昨日、昨日。大学行って、ガイダンス受けて、その後駅行って、そんで、。…!!!!」 俺は机の上に置いてあった薬箱に手を伸ばした。 「こ、これ!!!!」 「解熱剤の薬??でもこれで何で??」 「昨日買い物の帰りにぶつかったろ。ほら、あのすぐ走っていっちゃってさ!!」 「あ!そういえばぶつかってたね!もしかして、その時!」 「多分そうだ。あの時、薬の箱が入れ替わったんだよ。向こうが持っていった薬が解熱剤だったんだよ」 「なるほどね。そんでこっちに入ってたのが、性転換薬だったのね」 「そゆことだね…」 少女になった原因は解明されたが、疑問はまだある。 「にしても、どうして性転換薬なんて持ってたんだろう」 箱の入れ替わり。薬箱を持って走っていった女。一体なぜ?目的は? 様々な疑問を整理していく。 まず、なぜあの場所で女が慌て走って行ったのか。 そういえばあの後、何人かが後を追いかけて行っていたな。そこから考えると、女は薬箱を持って走り去っていった?追いかけて行った何人かの目的は性転換薬?日程との関係は? ーーーーそういえば今日は、ライブがある。 ライブ前日に取引?芸能界と関係が?ベルさんの失踪も何か関係が?まさか、な。 しばらく考えていたが、とりあえず腹も減ったので着替えることにした。が、今の姿にピッタリなサイズがない。 「ねぇ月夜??」 「何お姉ちゃん??」 「おさがり、着てみる??」 ーーーーはやく元の姿に戻りたい。
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