再び

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再び

「moon活動中止だって」 「えっ!!何で!!」 昨日から、テレビはmoon活動中止の話題で持ちきりである。 音楽界にとっても、大きな波だろう。 「moonの活動中止について、公式からは喉の不調による活動中止だということです」 活動中止までほとんど休息なしだったため、疲れがどっと来ている。 「今日は家でゴロゴロしてよーっと」 「ちょっと!コーディネート行くわよ!」 「えー!行くのー?」 「行くに決まってるでしょ!さ、行くよ!」 「コーディネートーー!!」 オシャレに興味などないのに、。 ーーーー 「つ、疲れた…」 「たくさん買ったから、たくさんオシャレできるわよ」 「にしても、こんなに買わなくても」 左手に持っていた袋を右手に移し、袖を捲って時刻を確認する。 「お姉ちゃん、トイレいくから先帰ってて」 「そう?分かった。1人で行けるかな?」 「もう行けるってば」 そう言って光希は先にショッピングモールを後にする。 俺は昨日の会場の方へと歩き出した。 ーーーー 「来たね、月夜くん」 「お待たせしました、これ、薬です」 「あぁ、ありがとう。確かに受け取った」 三宮は受け取った箱をパチンパチンと開け、中身を確認する。 「中身は3つで、飲んだのはそのうちの真ん中か」 「はい、あと、あの」 「ん?何だ??」 「あまり正体は明かさないんですけど、俺。moonです」 「…!!」 三宮は俺の正体に驚いていたが、少しして口を開いた。 「…やはりか。私も少し気になっていて、聞こうと思っていたんだ」 「そうだったんですか??」 「あぁ。組織は音楽界と関係していると見られている。一昨日の取引もライブ前日の会場だったからな。その取引と、このタイミングでのmoonの活動停止に少し引っ掛かっていたんだ」 「なるほど、」 「君はライブを好んでいるだろ??しかも、arcライブということもあって、何か関係があると思ったんだ」 正体不明のmoonだが、1つだけ分かることがあった。 moonはライブをよく好んでいる事。 「moonがライブに来てることも考えていたが、まさか君だったとはな」 三宮は少しして、再び話し始めた。 「組織の件だが、少し面倒なことになった。組織は、おそらく君を探すだろう」 「…!?」 「組織もそのうち君が薬を飲んだことに気付く。しばらくしたら刺客が来るはずだ。組織はあらゆる手で君の正体を探ってくる。いいか??何があっても、絶対に組織に正体を明かすなよ」 「…はい」 やはり、音楽界と薬は繋がっていたか。ライブ会場での取引だとすると、ライブにも何か関係が? 「あの、一つ聞きたいんですけど」 「何だ??」 「今年のアーティストランキングで7位のベルについてですが、ベルさんの失踪も何か関係があるんですか??」 「おそらくな。私もベル失踪について詳しく調べているが、まだ詳しいことはわからない」 「…」 音楽界でアーティストが失踪となると、arcもまた、今回の組織の目的と関係があるのだろうか。 「刺客についてだが、そのうち私の方から調査員を派遣しておく。あと、君の体の変化について経過を見ていきたい。君を何度か私のラボに呼ぶかもしれない」 「…はい」 「では、また会おう。世界一のアーティスト。よければ今度、歌を聞かせてくれ」 そう言って三宮は去っていった。 ーーーー 「おかえりー」 「ただいま」 「ちゃんとトイレ…」 「いけたよ」 「あら、そう」 俺は荷物をリビングに置き、時計に目をやる。 「…もうこんな時間か」 時刻は午後7時を過ぎていた。 「ねぇ月夜??」 「ん?何お姉ちゃん」 「一緒に、お風呂入ろっか??」 「ハァァァ!?」 ただでさえ1人で入るのもまだ慣れてないのに…昨日の今日でなぜ…。 ーーーー昨日。 「嫌だぁぁぁぁ風呂嫌ぁぁぁ」 「お風呂くらい入りなさい!!」 「だってぇこの姿じゃ、この姿じゃ、」 「入りなさーい!!」 「ぴゃぁぁあ!!」 ーーーーそして今日。 「やっぱり無理ぃぃぃぃい」 「入るわよー!!」 「ぴゃぁぁあ!!」 ーーーー 風呂から出て、光希にドライヤーで髪を乾かしてもらう。 「やっぱり、早く元の姿に戻りたい」 「何でよーせっかくなんだからもっと満喫しなさい」 「えーーー」 ーーーー しばらくして俺は部屋に戻った。 「にしても、髪乾かすのめんどくさいなぁ。時間もかかるし手入れもしなきゃだし」 椅子に腰をかけ、ほっとため息をつく。 「…明日は何限からだっけ。…てか、この姿で授業!?」 少女生活はまだ始まったばかりである。
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