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北風神社からバスでホテルには帰れるので、あとひとつと頑張って歩くのだが、お土産もの屋さんも少なくなってきていて、何故か自転車の貸出のお店が多い。
「だよねぇ。地図見ても自転車って思っちゃう」
のんびりと歩いてやっと着いた時にはもう足が棒と言うのがピッタリだったが、北風神社は鳥居に社がひとつポツンとあり、発掘工事の看板と奥には大きな機械があるので人が少ないのかもしれない。
「お賽銭……」
参拝をしたあと、見て回ろうにも何も無く、隅っこにあったスタンプだけ押して海沿いのベンチでボーっと海を見る。
「何も無いところだろう?」
かなり体の大きな人が言うので、工事の人かな?と「そうですね」と軽く返事をする。
「でも海は綺麗だろう?」
「はい。とても」
「嬢ちゃんはどこから回った?」
「え?東から順番通りに来ました」
「へえ。普通は楽な南から行くんだ。あの辺は歩いて回れるし飯屋もあるが、ここにはまだまだ繋がってない」
「地図から離れてますけどどうしてですか?」
「元々の神社の位置は変わらないんだ。少し離れてるからってここだけ何も無いとか寂しい場所だとか言うやつもいるが……俺はここが好きだな」
「海の神様でしたっけ?」
「そう書いてあるなぁ」
「離れてても四社はちゃんと繋がっているってことなんですよね?」
「お?おう」
「凄いと思います」
「なんでだ?」
「上手く言えないんですけど……離れていてもちゃんと四社が一つって感じがして。どの神社も全然違うけど、四つでひとつみたいな。あ、すいません、変なこと言って」
「いやいい。ありがとな」
「兄貴ー、コロッケ……あっ!」
「さっきの……」
「これ、うちの兄貴」
「そうなんだ。じゃあ、私はこれで」
「気をつけて帰れよー」
手を振ってバス停から乗ってホテルにつき、早速湯船でふくらはぎをマッサージする。
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