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「私飲めませんけど」
「ジュースもありますから」
バーで可愛いカクテルを作ってもらったが、アルコールは入っていないと言われたので口をつける。
「グレープフルーツ?」
「そうです。飲みやすいでしょう?」
「はい。秋穂さんのは……」と匂いを嗅がせてもらうと、ツーンとした匂い。
「私、一生無理かも」
「大人になれば飲む機会もあると思いますよ。それより神社です」
「はぁ」
「私たちは記憶が戻ったとはいえ、何かしらの神です。神様が祀られているのは?」
「じ、神社……です」
「見てこなかったんですね?」
「ごめんなさい……」
「それは仕方ないですけど、お狐様に会いませんでしたか?」
「道を教えてくれたり、鯉の餌の買い方とか、神社の話をしてくれた方がいたくらいですけど」
「それです!」
とパチンと指を鳴らす。
「普通の人は見えないんです。それか彼らが見えるようにしていたかどちらかですが、ほかの観光客が反応していないのならば見えていたと考えた方がいいです」
「そういえば」
話していた時に他の人はこちらを見ていた感じがしない。
というのも、視線に敏感なはずなのに何も気にならなかったし、鯉に餌をあげる人は他にもいたかもしれないのに誰も来なかった。
その事を言うと、「彼らはあの神社のお狐様なんです。私達が神様として祀られていても単独では無いですし、お稲荷様……お狐様がいても何もおかしくないんです」
「あの、私が見たのはお狐様で、困ってたから話しかけてくれたでいいのかな?」
「それもあるでしょうが、彼らにも何かしら感じたものがあったんじゃないでしょうか」
「わ、私が……鬼かもしれないとか?」
「鬼ではありません。見えたという影の角は、瀬織津姫は龍の化身とも言われていますから龍の角と考えたらしっくり来ます。ただ、普通の人が影などで見えるなんて事は有り得ないですが。それと、その影も姫愛さんが意識するだけで見えなくすることも出来るはずですよ」
「そうなんですか?でもやり方が……」
「そうですね……明日少し出かけませんか?」
「お仕事は?」
「明日は土曜日ですよ?」
「もう?」
「家出して三日です。栗花落達は全然こちらに気が付いてませんけど。帰るなら明日送りますよ」
「でも私……」
「悩むなら行動してみませんか?」
わかったと返事をしてカクテルを飲み、明日はロビーで待っていてくれと言われたので「おやすみなさい」と部屋の前で別れる。
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