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「この水も飲めるみたい」
少し飲むと、体に馴染むみたいに吸収されていくようで、体が軽くなる感じがしたが、疲れていたからそう感じたのかもしれない。
「凄いですね……この滝から下まで色んな形で繋がっていて。でも全ては一つに繋がっている」
「はい」
「姫愛さん」
「なんですか?」
「目を閉じて滝の音を聞いてみてください」
言われるまま目を閉じると、滝の音はもちろん、鳥のさえずりに風で葉が擦れる音。
そして……
「え?なに?」
「なにか聞こえましたか?」
「よくわかんないけど……」ともう一度目を閉じて耳を澄ます。
『おかえりなさい』
『姫様』
「なにこれ。誰だろう?秋穂さん、聞こえました?」
「いえ」
帰り道は反対側と矢印にあったので、滝の裏を通って反対に行くと、行きと違いかなり入口まで近くなっている。
「どうでした?」
「歩きにくかったので疲れたけど、なんだか悩んでいたのが無くなったというか……スッキリした感じがします」
「今、ちょうど日が当たってます。影を見てください」
また……変な影なら……と怖々と見ると影は普通の影で角も何も無い。
「どうしてだろ?」
「それは私にも分かりませんが、姫愛さんが心につかえていたものが少しでも無くなったからでは無いでしょうか?」
「……ここのお水は、上に行くほど春さんのくれたお水に似てました。後聞こえた声は何かわからないけど……」
「下の下流から上流に向かいましたが、どの辺が気に入りました?」
「えっと、中間の手前と滝かな?」
「それはどうして?」
「上手く言えないけど、なんか気持ちよかったから」
「その時の感覚、覚えていてくださいね」
「?はい」
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