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第十章 弟
私は身分を名乗り、そしてその人からの依頼内容を話して、どうにかその男性を落ち着かせることに成功した。そしてもう暴れないことをその男性に約束させた上で彼を解放した。
それから私たちは、その人の部屋で話をすることになった。
「お兄さんが殺されたというのはどういう意味ですか?」
「意味も何もないさ。この女が兄を殺したんだよ」
「殺した?」
「ああ」
「どうやって」
「それはこの女に聞いてみろよ」
「皆神さん、本当ですか?」
しかし、その人は私のその質問には答えなかった。彼が死んだと聞かされてから目に涙を浮かべて、ずっとうつむいたままだった。それで私は質問を変えてみることにした。
「では皆神さん、彼が亡くなっていたことを御存知でしたか?」
するとその人は首を横に振った。
「け、しらじらしい」
「お兄さんが亡くなったのは事実なんですね?」
「ああ」
「でもどうしてそれが皆神さんの手によると」
「この女は兄の気持ちを踏みにじったんだよ」
「どういうことですか?」
「兄はこの女と結婚をしようとしていた」
「弟さんはそれを知っていたのですか?」
「ああ、兄から聞かされていたからね」
「そうなんですね」
「兄はこの女と一緒に暮らす家まで建ててた」
「家?」
彼のその発言には三人が驚いた。
「家って一戸建てですか?」
「ああ、馬鹿だよ兄は。こんな女のために」
「皆神さん、御存知でしたか?」
その質問にもその人は首を振った。
「それなのにこの女は兄を一方的に捨てたんだよ」
「え!」
「そう。この女は突然兄の前から姿を消したんだよ」
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