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第二章 はじめの一歩
「さて、どうしましょう」
私がそう声を掛けるとその人は少し驚いた顔をして私を見た。
「先ず、どこから探しますか?」
「もしかしたら、今からすぐに行って頂けるのですか?」
「はい。今からでも宜しければ」
「どうしよう」
「どこへ行こうかと迷ってますか?」
「はい」
「彼が行きそうな場所が色々と思い浮かぶのですか?」
「いいえ。思い当たるところは全て当たってみたのですが、どこにもいませんでしたので」
「例えばどこに行かれたのですか?」
「彼の弟さんに連絡を取ってみました。ですが、心当たりがないと」
「彼の家族は弟さん一人ですか?」
「はい」
「他にはどこへ?」
「それから彼の友人にも連絡をしました。でも皆さん心当たりがないと」
「なるほど」
それで彼女は仕方なく探偵事務所のドアを叩くに至ったのだと思った。
「それでしたら彼との思い出の場所はどうですか?」
「それはたくさんあります。たくさんあり過ぎて却って迷ってしまって」
「確かにそうですね」
「ですから、どこから始めたら良いのかも是非先生のアドバイスを受けたいと思って」
「それでしたら彼と初めて会ったのはどこだったのですか?」
「初めて会った場所ですか?」
「はい」
すると彼女は口元に僅かな笑みを浮かべてその時のことを語り出した。
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