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第四章 出発
「いまあなたが腕にされているのが、そのブレスレットなんですね?」
「はい」
その人の腕にはピンクの石と青い石が組み合わさったブレスレットがはめられていた。それを良く見ると確かに青い石が四つあった。
「それからどちらに行かれたんですか?」
「私、そんなナンパみたいな誘いには一度も乗ったことはないんですよ」
「ええ、わかります」
「それがあの日はどうかしてたんでしょうか。きっとこのブレスレットの力に突き動かされていたんでしょうね」
「そのブレスレットにはそんな力があるんですか?」
「墓地さん、あ、墓地さんてこのブレスレットを作ってくれた人なんですが、素晴らしい力をお持ちの方なんです」
「一種の超能力者ですか?」
「はい。その方が言うにはこのブレスレットは潜在能力を高めるものなので、これをつけているからと言って新しい能力が芽生えたり、運命ではない出会いが新しく発生するわけではないということらしいのですが」
「なるほど」
「すみません。話がそれました」
「いいえ、ではそのブレスレットにはそういう力があるんですね。でも、そうだとすると、あなたがそのブレスレットの力で彼について行ったということではなくて、元々彼について行くべき運命的なものがあったということなのでしょうか」
「そうだと思います」
「その墓地さんにはご相談されましたか?」
「え?」
「彼がいなくなったことを」
「いいえ」
「どうしてですか?」
「墓地さんは時々ふらっとどこかへ行かれてしまうんです。そうなったら携帯も何も通じなくなってしまうんです」
「そうなんですね」
「それでどうしようもなくってこちらをお訪ねしたんです」
「わかりました。では行きましょうか」
「行くってどこへですか?」
「何も手掛かりがないということですよね?」
「はい。正直言ってそうです」
「では今までの彼との足跡をたどってみませんか?」
「足跡をたどる?」
「はい。彼との思い出を順に追ってみたら、何か思い出すかもしれません」
「わかりました」
その人の返事には力がなかった。
「先ず、お二人が初めて行ったレストランに行ってみましょう」
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