7人が本棚に入れています
本棚に追加
恭輔は聴覚と嗅覚に神経を集中する。右2時方向11メートル左9時方向8メートルに気配。
「不動明王火界呪! ノウマク サラバタタギャテイビャク サラバボッケイビャク サラバタタラタ センダマカロシャダ ケンギャキギャキ サラバビギナン ウンタラタ カンマン!!」
神咒とともに恭輔の周囲20メートルが蒼い火炎に包まれる。眉間を嫌な波動が刺激し嘔吐感にさいなまれ苦しむ恭輔。
「やっかいな……」
2体の気配が途絶えた、と感じたら斜面の上から機械のような駆動音が耳朶に響く。
「なにぃー!?」
視線をやるとそこにはごつい角ばった甲冑をまとったような黒い人影があった。ただ大きさは約10メートルの巨人である。驚いていたらすぐ傍の巨石2体が地響きをたて動きはじめ立ちあがり上空に両腕を持ち上げた。両腕の間、巨体の胸部の前の空間が歪んで見える。
「すごいすごいすごい♪」
結界の中から幸徳井朋嗣の歓声があがる。
ドゴォ────ン!!
耳をつんざく豪音とともに何かが撃ちだされ上空の雲が弾け散った。ほどなく巨大な触腕が無数の肉片となって辺りに墜ちてくる。透明だった肉片は白く変色し形状が確認できるようになった。
「蛸の肢みたいですな」
「クトゥルーの星の落とし仔?」
「アレにステルス能力はなかったはずです」
最初のコメントを投稿しよう!