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気吹戸主
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枷門 仁は片瀬美那とアーイシャをグルル(バイァクキィー)の背に乗せると二人の周りに結界を張る。
「この度はこちらの誤解であらぬ疑いをかけ御迷惑をおかけいたしました。心より御詫びいたします」
司祭の装束をまとった女性が深々と頭をさげ謝罪の姿勢をとる。
「頭を上げてください枢機卿、行き違いは誰にでもあるものです」
ヴァチカンの庭園に魔物がいる場違いな状況がなんとも倒錯的である。
「ですが……」
「私としては邪神に抗がう仲間が1人でも増えてくれたなら、これほど心強いことはない」
ふと夜空を見上げると違和感を覚え意識を拡大させ気配を探る。
「枢機卿、空に意識を翔ばしてください」
枷門 仁は夜空に掌をかざす。
「数えきれない。何だ、こいつは?」
「認識しました。アバドン、なんでしょう?」
「霊的存在でも異層世界からの侵入者でもない、感覚的には失われし〝先住者〟? いや違うな……」
枢機卿は己が権能を励起させ、さらに意識を拡大させる。彼女の権能はサンダルフォン、意識の拡大はエーテル体・アストラル体の膨張をともなう。
「無色透明の海月のような怪物が成層圏内に無数にいるようです」
「星間吸精鬼か」
枷門 仁は枢機卿に対処法を教授すると黄色の印を腰にあてがう。
「雷炁招來!」
「健闘を祈ります。神の御加護を」
「成層圏の敵を始末しながら日本に帰ります」
アバドンの姿に変わるとグルルと共に翔びたつ。あっという間に二つの光点にかわりヴァチカンを去っていった。
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