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体調不良だとはいえ、客でもない俺が店の椅子を占領してしまっていると気付き、焦って立ち上がろうとしたのをその穏やかな笑顔で制した生垣さん。
絶対に迷惑なはずなのに、彼は俺にひとつのお饅頭を手渡してくれて。
“低血糖起こしてたからな。あんこの甘すぎない甘さが体に染み込むようだった”
これも、と一緒に渡してくれた熱い緑茶も、暑い日だったのに心地よく俺を癒してくれた。
『楽になるまで座っていてね』と言った生垣さんは、気にさせないためなのかはたまた心配してくれていたのか俺の隣に腰かける。
それはまるで、こうしていることが当たり前のように錯覚させる優しさで。
そして再び立ち上がれるようになるまで穏やかで緩やかな時間に包まれた。
Ωは何かと危ないから、と過保護な両親に反発して無理やり一人暮らしをはじめた大学生活。
一人でなんとかしなくちゃ、と精神的に追い込まれていた部分もあったのだろう。
Ωだから。
Ωなのに。
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