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毎日通っているお陰ですっかり常連になった俺の名を呼ぶのは店主であり職人の生垣さんで――
「今日もいつものでいいかしら?」
そんな生垣さんの隣でふわりと微笑みレジを担当してくれるのは、彼の奥さんだった。
ツキリと胸の奥が痛むが、表に出ないよう注意しながら代金を支払いお饅頭をひとつ受け取る。
お礼を言って店の外へ出ると、縁台に座って待っていた泰斗がすぐに立ち上がった。
「帰ろうぜ」
「……おう」
暫く無言で歩き、緩やかなカーブを曲がり終えたところで買ったお饅頭を半分に割る。
白いお饅頭から溢れんばかりのあんこが顔を見せ、そしてそのお饅頭の大きい方を泰斗へと手渡した。
「やめればいいのに」
はぁ、と再びため息を吐いた泰斗が俺からお饅頭を受け取ると、その大きな口でがぶりと頬張る。
たった二口で食べきる様を見つめていると、それに気付いた泰斗と目が合い慌てて俺もお饅頭にかぶりついた。
「あっまぁ……」
「やめればいいのに」
「それ、今日二回目な」
口いっぱいに広がる甘さに狼狽えつつ必死に咀嚼し飲み込んでいく。
「甘いの苦手だろ」
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