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心配してくれるのはありがたいけれど、だからこそ家を頼ることに抵抗を持ち一人で過ごしていた俺は、ただ隣に座って時間を過ごしてくれるその温かさが、口に広がるあんこの甘さ以上に甘く感じて。
たったそれだけ。そうわかっているのに、トクトクと速くなる鼓動が、じわじわと熱くなる頬が。
胸の奥を締め付けるその甘さを自覚した。
そして。
『おかわりはいるかしら? はい、貴方も飲むわよね』
二年前も今と変わらないふわりとしたその微笑みのまま店内から顔を出したその女性の姿に、二人の薬指に光る揃いの指輪に。
胸の奥に芽生えた甘さが苦味に変わり、心が軋んだことで恋と呼ぶには淡すぎるその想いが始まる前から終わっていたことを突き付けた。
タイミングや、他の要因もあったのだろう。
始まる前から砕けたその想いが小さなキッカケとなり、それまでの張りつめていた全てを巻き込むような軋みを生んだ。
それ以来俺にヒートが来なくなったのだ。
「……告白、しねぇの」
「始まる前から終わってたしな」
「ならなんでッ」
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