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立夏はわずかに口を開けた。
ノアが嬉しそうだったから。
そうか、俺は甘やかされていたのか。何度も口にした、いつ死んでもいいって言葉は聞き流されていたんじゃなく、受けとめられていたんだ。
「桐谷もな。久我からの答えを聞かないうちにくたばってもらうわけにはいかない」
呼吸器官がキュッと縮まる。
「桐谷はそんなに危ない状況なのか?」
立夏が纏った重たい空気を、ノアは瞬時に感じ取ったようだった。
「心配するな。まだ生きている」
言い、フッと笑む。
「桐谷は人を頼っちゃダメだって思ってんだろうな。でも、言いたい。いや、アイツの場合は普通なら言うんじゃないかって感じか? まあ、なんだ。零れた情報をこっちが拾ってやらないといけないことに変わりはない。新人らしく可愛げがある奴だよ」
あ、と思った。
ノアは桐谷を気に入っている。
いいことなのに、胸がそわそわする。
「署に戻って、お前たちが帰ったあと、ゾフとゼアにコンビニでのことを俺の考察をまぜて話した」
ノアの声が固くなる。
「女は人違いをしたようだと被害者は証言している。女が被害者に言った言葉、覚えているか?」
「かいちょう」
「そう。桐谷はY高等学校の生徒会で会長をしていた」
ノアから得た事実と桐谷の危機の内容が頭を駆け巡る。
「本当の標的は桐谷?」
「それを裏づけるため、Y高へ行ってきた。桐谷が在籍していた頃、中退した生徒が一人いる。彼女は生徒会で書記をしていた。名前は」
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