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「……」
「…あの、あと予備5枚くらいなんですけど」
「ふぅ…これが悪魔のやり方って訳か…」
「いや、なにもしてないっす」
背後には誤字でおじゃんになった契約書が積み重なっている。
指先が震え過ぎた。
名前を書ききれる気がしない。
一枚目二枚目の失敗では黙々と別の契約書を差し出していた悪魔も15枚目を超えたあたりからため息が混ざり出して、だんだんジト目でこちらをねめつけながら尻尾をゆうらゆうらやり出した。
やめろ!私は見られてると余計緊張する質なんだ!
そしてついに悪魔は代替案を差し出してきた。
「なんかもうハンコとかでもいいですよ?」
「いやだ!形式通り以外の方法とかなんか怖い!あとからハンコだと契約違反だとかいちゃもんつけて命を奪うつもりだろ!?」
「あはっ、どうですかねー」
無駄に顔のいい悪魔が悪魔らしく笑う、がすぐに表情を引っ込めた。
「…うう、帰りたい…」
切実な声だった。
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