天空の城

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天空の城

 今日もいい天気。いろいろな形の雲が出ていてお日様は暖かい。そしてそんな空に一つぽっかりと浮かぶ大きな城。空に城があるなんて不思議な光景だなぁと思う人は誰もいない。物心ついた時から当たり前にあるからそういうものだって思ってた。  あの城が一体いつからあって、どうして空に浮いているのか誰もわからない。いろんな絵本や歴史書にも出てきているから少なくとも五百年以上前からはあるみたいなんだけど誰もその詳細を知らない。  いろいろな噂がある。神様のお家だとか、天空には別の人間が住んでいるんだとか。いろいろあるけれど世の中で広く信じられているのはこれだ。  あそこには究極の魔法がある。  だって城が浮いているなんて普通はありえない。魔法の力で浮いているとしたらそれはとてつもないことだ。一人の魔法使いが物を持ち上げられるのはせいぜい一人の人間が限界。巨大な岩一つだって持ち上げるのに五人は必要だ。  それを城がまるまる浮いているとなると誰かの力というより、永遠に稼働し続ける凄まじい力の魔法があの城にはあるんじゃないか。そう信じられて長い歴史の中魔法使いは誰もが天空の城を目指し。そして誰も到達していない。  あの城を目指すのは魔法使いたちの悲願でもある。でも魔法が使えない私には関係のない話。 「おはようシェフィ」    幼馴染のマイカが笑顔で挨拶をしてくる。 「おはようマイカ、今日もいい天気だね」  魔法使いの子供は魔法使いとしてうまれる。両親のうちどちらか片方だけでも魔法使いなら、子供は魔法使いとして産まれるからこの世には魔法使いが多い。  わざわざ魔法が使えない人同士が結婚をするというのはない。魔法が使えれば便利なことが多い、よほどの恋愛結婚でない限りは結婚する時必ず片方が魔法使いである。  でも私の両親は魔法使いじゃない。お互い孤児で幼い頃に出会って兄妹のように育って。そして魔法使いが産まれないというのを承知で結婚したと言っていた。もちろん魔法が使えないことが差別の対象では無いけど、ああこいつ魔法使えないのかという態度は数多く見てきた。  同じ村で育った友達もみんな魔法使い。魔法が使えないのは私だけ。でもそれを馬鹿にされたり仲間外れにされた事は無い。
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