魔法が使えない者達とは

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 王族か。あまりに遠い存在だから私はピンとこない。なんでも代々とても頭が良くて、戦には自ら先頭に立って戦うのだとか。知力、体力、すべてにおいて優秀だと聞いた。  そういう教育をされているから、というのもあるけどそれができてしまうのだからすごい一族なんだろう。それこそ、よくわからない存在よりは尊敬に値する人たち。って、ちょっと待って。この流れはまさか。 「……あの、もしかして。今日お会いするのって……」 「やっぱり鋭いですねえ、素晴らしい」 「ちょっと待ってください、私作法とか知らないんですけど!」  さすがに慌てた。王族にお会いするってこと!? 田舎育ちの私が! 「慌てなくて大丈夫です。とても気さくな方で、普段から身分を隠して下町を歩いていますよ」 「でも」 「それに、先日お会いしていますし」 「え」  まさか、この間あった人たちの中に? こう、偉そうな感じの人はいなかったけど。ああ、だからか。そういうのを感じさせないから下町を歩けるのか。  そんな会話をしていれば、一般人は立ち入り禁止の方から一人の男性が姿を現した。その人は先日あった若い男性、ヴァイスさんだ。確か途中で仕事があるからと帰った人。城の異変について話したときはいなかった。 「驚かせてすまないね」 「いえ、えっと」 「どうかこの間と同じに接してほしい。それに身分を隠しているから、様付けなどで呼ばれてる所を他の人に見られたらやっかいだ」 「……。そうですね、わかりました」  今更作法なんて無理だし、本人がそういうならいいか。普通はそこで「そういうわけには!」と言うものなんだろうけど、無理なものは無理だ。その決断が気に入ったらしい、ヴァイス様……ヴァイスは穏やかに微笑む。 「さて、長々説明しても仕方ない。結論からいこうか」 「はい」 「城の手前まで行こう」 「はい?」  目が点になる、とはこのことだ。いや、ちょっと待って。 「説明してから行くより、道すがら説明する方が手っ取り早い。すまないが忙しい身でね、あまり時間がないんだ。君の事を母上たちに話したらそりゃもう大騒ぎだったから」 「なにか、あるのですねやはり。魔法が使えない者には」 「賢い子だね、エデンのいうとおりだ」  エデン。神父様が頷いて見せた。どうやら神父様の名前らしい。ヴァイスはすぐに歩き始める、教会関係者しか通れない方に。私も続いて、私の後ろにエデン神父が続く。 「人はね。魔法が使える者が特別なんじゃない。逆だ、使えない者が特別なんだよ」
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