魔法が使えない者達とは

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 使えない方が、特別。その言葉はずっしりと私の胸にのしかかる。歩いて行った先は、懺悔室の教会側の部屋だ。床の一部を軽く二回足で踏むと、無音のままスッと床が開いて階段が現れた。地下通路だ。 「遺伝の優劣はわかるかな?」 「はい。母に言われて勉強しました。豆を育てる時、品質の良い豆を作るために……」  どうして、学校に行っていないお母さんが遺伝の優劣を知っていたんだろう。今更、気が付いた。 「ご両親から勉強しなさい、と言われたことは多いだろう。それは魔法が使えないからこそ、知恵を付ける必要があると知っていたからだ。昔から魔法が使えない人は勉学こそ武器であると知って生きてきた。そういう人達は、一般には出回っていない参考書を数多く持っている」  階段を下りていく。かなり深い、地下一階や二階っていう深さじゃない。だんだん涼しくなって来た、地熱だ。地熱、というものもお父さんから教わったんだった。お酒や野菜を保存するのに、地下は一年中同じ温度だから最適だって。 「魔法使いは優性遺伝だ。片親が魔法使いならかならず魔法使いが産まれる。でもね、極稀に両親が魔法使いでも魔法が使えない子供が産まれることがある。その子らは必ず王族として生きることになる」  今とんでもない話を聞いているのは間違いない。つまり王家とは、一つの血筋ではなく。国中から集められた魔法が使えない者。優性遺伝であるはずの魔法の要素がまったくない。  いやこの場合逆だ、優勢の魔法要素をはるかにこえる強烈な優性遺伝。魔法が使えない、という……。混乱してきた。どっちが優性遺伝なんだろう。常に生まれないなら、条件がそろった時だけか。隔世遺伝? 先祖返りみたいなものだろうか。  お父さんたちは王族として生きていたことはない。すべての魔法が使えない人が王族になるわけじゃないみたいだ。何か条件がある、ってことなのかな。 「魔法が使えない人こそ、本来の人類なんだよ」 「?」 「人には人の役割がある。血筋ではなく、そうだね。魂に刻み込まれた使命みたいなものだ」  話しているうちに辿り着いた。地下にはとても広い空間が広がっていた。柱がまったくないのに、崩壊することなく地下が保たれている。 「すごい」  私は目を見開いた。これ、壁に使われている石の複雑な組み合わせだけで支えているんだ。まるでパズルだ、どうやって作ったんだろうと思うくらい。石同士が曲線や直線、いろいろな形で絡み合いながらしっかりと支え合っている。相当すごい計算がされていないと無理だ。 「あはは、できれば地面を見てほしいな」
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