天空の城

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 それでもやっぱり天空の城を目指すんだという話に私はついていけない。この話になったら私はみんなから離れるようにしてる。それに気がついたみんなは私の前では城の話をしないようにしていたけど、最近は少し浮き足立っている感じだ。  城に行く道がもう少しで見つかるかもしれないという話がそこら中に溢れている。私たちの村だけじゃない、たぶん国中の話題だ。 「さすが国王陛下が国中から集めた精鋭たちだよね。これが入り口なんじゃないかっていう魔法陣を見つけたんだって」 「具体的にどういうものなんだろう?」 「情報出てたよ。使い方がわからないからこれの使い方を最初にわかった人には城に入る権利と、国王直属の待遇が用意されてるって話」 「それじゃあ田舎の私たちは不利じゃん。その話がこっちに来るまで一ヵ月以上はかかるでしょう。王都に住んでる人たちの方が早く話を聞いてるんだからずるいよ」 「今のところまだ方法は見つかってないみたいだけど」  どうやら魔法を使った城への転送の魔方陣のようなものが見つかったらしい。ただ使い方がわからず何をやっても動く気配は無い。文字も暗号化されているうえ複雑で、何とか転送用の魔方陣ということだけわかったということだった。  城に行くのは国の悲願でもある。情報を隠さず国民に情報を開示してくれた国王にみんなが敬愛を示している。魔法陣の構成図は号外などで広く配られていて、みんなも絵を見ている。大人たちも、通りかかる行商人もみんな紙を見ながら作業したり歩いたり。  魔法使いたちは入り口を探して研究の毎日。最近は農作業にもみんなあまり参加しなくなってきた。私はやることがないから、雑草を抜いたり土を掘り起こしたり。そろそろ秋に育てる野菜の苗を芽吹かせておかなければ。冬に食べるものがなくならないように。 「シェフィ、休憩にしましょう」  お母さんが笑いながら右手に持っている籠を持ち上げて見せる。あの手軽さから言ったら、多分パンを持ってきてくれたんだ。夕飯が食べられるように、軽めのもの。昨日木苺のジャムを作ったからそれだろう。  大きな木の日陰に入りながら私たちは一息ついた。 「魔法使いに、なりたかった?」  その言葉に私は目を丸くした。今までこの話は私たち家族でした事は無い。魔法使いに産んであげなくてごめんねと言われたこともないし、私自身が魔法使いになりたかったと言ったこともない。
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