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「それってすごいことじゃない!? なんでそんなことに!?」
「私ね、今日の夜には村を出るの。お母さんたちも今準備に追われてるから、私も早く戻らないといけない。ぱぱっと済ませちゃおう」
魔法陣の場所に辿り着いた。紙をマイカに渡すと、マイカは戸惑いながらも式を完成させる。するとわずかに魔法陣が光り出した。
「みんなはまだ到着してないか」
光が見えない。私は昔から光を見ることに強かったけど、これのためだったんだ。強い光を見ることもできるし、弱い光も見逃さない。魔法陣発動を見逃さない為だったんだ。
「どこ行くの?」
「王都だよ。王族とご挨拶。特別な役割を授かってる」
「何それ? ちょっと、こんな事してる場合じゃないじゃない!」
「城はいいの?」
「後で良いよ! シェフィ、ものっすごい出世なんでしょ!? お祝いしないと! 何か手伝うことはある!?」
「優しいねマイカ。マイカだけは私をちゃんとみてくれてたね」
本当、優しい。まさか魔法使いの悲願である城の到達を後回しにしていい、というとは思わなかった。
「王家にお仕えするの!?」
「逆。王家が、私に仕えるの」
「え?」
わけがわからない、といった顔をした時。遠くに二つ、魔法陣の光が見えた。
「あと一つね。一番遠いから仕方ないか、滝の近くじゃ時間かかるよね」
「そうね……ちょっと待って。なんで場所知ってるの」
「知ってるよ。魔法陣の場所、全部地図に載ってたから」
「……え?」
マイカが、興奮した様子から一気に青ざめた。勘が良いな、マイカは。皆と違うのはそこだ。ちゃんと危機管理ができている。賢い、魔法使いにしては。ほんの少しだけね。だから、私も気にかけていたんだなあって今ならわかる。
魔法使いは、賢いと困るの。
「魔法って、どこから生まれると思う」
「……」
「人間にしか使えない、不思議な力。なんで動物は使えないんだろうね」
「それは……神様が人に授けた、って。教会では教えてるけど……」
王家が取り仕切っている教会。そこでは人は神に愛された生物であり、神の力の一部を分け与えたと言われている。最もそれらしいシナリオを広く周知してきた。
「じゃあ何で使えない人がいるの。私は神に愛されてないの? なんで?」
「えっと」
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