魔法使いは城へ導かれる

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 考えたこともないんだろうな。魔法は使えて当たり前。人がエラ呼吸ではなく肺呼吸をしているように。歩きながら本を読むことができたり、同時にいくつも料理が作れたり。複数を同時進行できることがどれだけ凄いか。動物はできないのに。それができることが当たり前すぎて考えもしない。 「人と動物の違いは思考力、脳の大きさのちがいでしょ。人は知恵をつけてきた。だから魔法が使える。授かった力じゃないよ、もともとある力を魔法として使っているだけ」  マイカが一歩後ずさる。怖いのかな? 違うか、警戒してるのか。何言ってるのかわからないだろうから。  お母さんたちからも言われた、マイカは何か気づいたかもしれないから注意しろって。だから一緒に来たんだけど。 「魔法は、人の生きる力だよ。大昔の言葉では代謝(メタボリズム)っていったみたいだけど。それを外部へ使う変換方法を作り出した」 「それって、つまり。私たちは、自分の生きる力を使ってるってこと? だから大きな魔法を使うと疲れるの?」 「そう。別に魔法を使うと早死にするわけじゃないよ、心配しないで。でも、体の負担が大きいから過度に使いすぎると早死にはしやすくなる。それじゃ困るからつくられたのが、あれ」  顎で空の城を示す。 「あそこにはね、末長く魔法が使えるように魔法使いの体調を整えるものが全て揃ってる」  別にわざわざあそこを目指すように教育しなくても。魔法が使える人と使えない人という二種類が存在するだけで、魔法が使える人は自分が優れていると勘違いをする。魔法が使えない人に比べて苦労せずにいろいろなことができるから、どこまで高みを目指せるか試してみたくなる。  謎の魔法陣があれば読み解きたくなる。興味をそそるように中途半端にしてあるのはそのためだ。まさか計算式もわからないほど馬鹿になるとは、「先代」は思っていなかったみたいだけど。 「そんな大切なものが、なんであんな空高くにあるの。それに私たちが知らないの、おかしいよ」 「情報を遮断するため。あの中の詳しい様子がわかったら困るから」 「なんで。魔法使いにとって良いことなのに、どうして困るの」 「どうしてだと思う」  私に逆に問い返されてマイカが迷惑った様子だ。少しぐらい自分で考えてみてもらうのもいいかもしれないと。ほんのちょっとした気まぐれ。 「誰が困るの」 「私たち」
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