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23 気づかい
妻が眠っていた俺を起こした。
「大学の時、コンサートのために、練習していたけど、あまりうまくならなかった。それでも、なんとかコンサートを終えたら、何も評価はなかった。
でも、ある人が、『がんばったな』と褒めた。
あの時、私はなにも感じなかったけど、私を見ていてくれていた人が居たことを、今になって気づいた・・・」
俺は起こされて、こういう話を聞かされた。
妻が何を言いたいか、わからなかった。
俺ならこういう場合、人には話さず反省する。今後は、周囲の人たちの気づかいをしっかり受け止めてみようと。
妻は、
『私を見ていてくれていた人が居たことを、今になって気づいた』
と言うが、起こされた俺が妻の話を聞いている気づかいに、妻は気づいていない。気になったので、俺の立場なら、そういう時にどうか話すと、
「わかった。自分のことだから、人に話さず反省する」
と言って、さっさと眠ってしまった。
翌朝、目を覚した妻は言った。
「あの人、ずっと私のことを見ててくれたんだよ・・・・」
結局、妻は何も気づかないまま、私の元を去った。
私の気づかいに気づくのは、いったい、いつのことだろう・・・。
(了)
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