ゆきだるま、ゆきだるま。

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 ***  そこそこ積もってくれた上、すぐに溶けなかったこともあり、私達は十分すぎるほど雪遊びを楽しむことができたのだった。  私達が遊んだ公園は、丁度マンションと学校の間にある。正式な名前は思い出せないが、私達は“ミナミ公園”と呼んでよく遊んでいた。ブランコやシーソー、砂場などの遊具があるエリアと、ボール遊びができそうな広場と二つのエリアに分かれている公園で、主に広場の方で雪遊びを満喫したのである。  残念ながらかまくらを作るのには失敗していたが(あれはただ雪を積み上げていくだけでは駄目らしい。どうやって真ん中に空洞を作るのだろう?とみんなで首を傾げたのだった)、雪合戦などをするには十分な雪があった。  散々みんなで雪まみれになったところで、最後はそれぞれ多い思いに雪だるまを作って総仕上げである。誰の雪だるまが一番大きいか、一番かっこいいか。そんな比べっ子をしてしまうのも、子供ならではと言えるだろう。 「ういいい!俺の雪だるまが一番でけー!勝ち!」  やーくんは腰に手を当てて、えっへん!と胸を張っていた。彼が作った雪だるまは、確かに私やなかちゃん達が作ったそれよりも頭一つ分くらい大きい。しかし、形が随分いびつである。上の球と下の球がどっちもごつごつしているせいで、今にもバランスを崩して転げ落ちてしまいそうだった。 「大きくたって、不格好じゃ駄目だと思うのー」  なかちゃんが、ぷくーっと頬を膨らませる。 「なかの雪だるまの方が、ずっとかわいいもん。綺麗にまあるくできてるもんー!だからなかの勝ちー」 「なんだとー!?」 「やめなって二人とも。みんな違ってみんないい、でしょうが。楽しく作れたから文句ナシ、ね?」  どうどう、と二人を宥めつつ、私はそれぞれの雪だるまを吟味した。やーくんが作った雪だるまと比べると、なかちゃんの雪だるまはかなり小さい。しかし、雪球をまあるく仕上げることに拘ったせいか、彼が作ったものより球のカタチが綺麗だったし、目玉の位置もバランスが取れているように思われた。  雪だるま一つ取っても、それぞれの性格が出ているのは面白いと思う。他の子の雪だるまも、なんだか全体にほっそりしているものや逆にふとっちょのもの、石を並べて髪の毛みたいに飾ったものまでまちまちで興味深かった。私の雪だるまも――まあさほど大きくもなくキレイでもない地味なものだったが、楽しく作れたのでよしということにしよう。  と、ふと雪だるまを観察していた私は、あることに気付くのである。 「3、4、5、6……7。あれ?なんで雪だるま七個もあるの?誰か二つ作った?」  雪だるまの数が多いのだ。みんな、一人一つ作ったのではなかっただろうか。ここには私を含めて六人しかいない。そして、私達が雪だるまを作り始めるまで雪だるまはなかったし、今日は広場は私達だけでほぼ貸し切り状態だったというのに。 「え、俺知らねえ。一つしか作ってねえし」 「僕も」 「なかも一個だよー」 「あたしもー」  子供達は次々主張する。どの雪だるまが余るのだろう。一人ずつ確認していったところで、公園の出口に一番近いところにあった雪だるまが残ることに気付いた。  さっきまでそこになかったはずの、作者不明の雪だるま。  やーくんが作った雪だるまより頭半分小さく、それでいて目や口を作っていない、のっぺらぼうの雪だるまである。そこそこ綺麗な出来ではあるが、誰も自分の作品ではないというのだ。 「雪だるまが、どこかから歩いてきたんだったりして!なか達と遊びたくてそうしたのかも!」 「う、うん。そうかもね」  なかちゃんがロマンのあることを言ったが、私は少しだけ不気味に思ったのだった。  誰も作っていない雪だるま。なんだかそれが、生き物のように急に、その場に生えて来たように思えて。
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