2/2
前へ
/42ページ
次へ
 ユノの部屋を出たところで、マリルカとアリエールがやってきた。 「先生!書簡を奪われましたのよ!」 「別にいいじゃんか。お父様からの私信でしょ?ってユノじゃんか。次どうするの?」 「おはようございますマリルカ。よく解らない話は使い魔に聞いた方がいいです」  ユノは、隣の魔王小屋の扉を開けた。  ふ、ふはは!ふははははは!  魔王は、朝っぱらから馬鹿笑いしていた。 「遂に!遂に完成したぞあの兵器が!これがあれば、たとえユノ様とて恐るるに足りん!おぎゃあああああああああああああああ!!」  恐るるに足りんという相手が普通に入ってきて、魔王は悲鳴を上げていた。 「何すか?!何なんすか?!」  べそをかいて魔王は言った。 「おはようございます。魔王、北の大陸に何かがあるということなので、ルバリエ先生に呼ばれました。力を貸せ魔王」 「で?!どうすんの?!ここ私のプライベートエリアですよ?!」 「だからよお、北の大陸に行きてえんだよユノは。走っていきゃあ大したことねえんだけどよ、このメンツで行くなら飛行艇だろ?ユノ飛行艇嫌いなんだってよ。だから、魔王、飛べねえ?北の大陸まで」  あ、スライムいたの? 「移動はともかく、内容はどってこない北伐でしょ?さっさと片して帰りたいのよ」  新学期から王女になったらしい娘か。マスカレード解除したようだな。 「魔王、お願い出来ないかしら?」 「勇者の嫁ではないか。貴様、体は大丈夫なのか?」  魔王に心配されて、フランチェスカは嬉しそうに言った。 「ええ。今安定期だし、王陛下とは、いい関係築きたいのよ。お父さんの立場なくなるし」  北の蛮族退治か。くだらんな。 「ならば、ふん」  魔王が指を弾くと、一瞬で北の大陸の只中にいた。 丈の短い草がまばらに生える、稜線の中ほどに揃って立っていた。 「相変わらず凄い魔力ですのね。ですが、ぎゃああああす!寒いですわ!スカートに寒風が!」 「今、気温が10度程度だ。アカデミーは温暖湿潤気候で、北の大陸は寒帯気候だからな。東に向かえば、いずれツンドラ気候になる」  誰もがスカート生足だったので、1人だけローブを着ている魔王がえらい憎かったようだった。 「魔王!そのローブをお貸しなさいな!1人だけ防寒対策していてずるいですわ!」 「私がローブ・オブ・ロードを着ていて何か文句でもあるのか貴様は!寒いというなら、その辺に城でも建てればよかろう!」 「あ、坂を上がったところに、建物があります」  1人だけ平然としていたユノが言った。 「まあ緊急避難ってことで、徴発(ちょうはつ)してもよくない?」 「いいこと言いましたわマリルカ!これ以上寒いと、先生もお腹に障りますし!」  1人、アリエールは駆け上がっていった。 「どうでもいいけど、この建物何?何か塀がずっと続いてる」 「出来の悪い、万里の長城のようだな。あれは確か、北の蛮族の侵略に対する防御の為に築かれた塀だったな」 「ふーん。ちょうどいい建物ね?でも、塀がショボすぎる気もするけど。木の板1枚が延々と続いてるし」  魔王とマリルカは、そんなことを言い合っていた。  アリエールが塀に手をかけようとしたところで、 「そこな埒外者よ!我が威を受けよ!」  物凄い、筋骨逞しいおっさんが塀を飛び越えて現れた。 「我は偉大なるガイネウスが血を受け継ぎし戦士!我が名に懦声(だせい)を発せよ!我はマリ」 「あ、マリウス」  んん?!?!  ぼそっと呟いたマリルカの声に、おっさんは反応した。  マリルカは、誰が見てもアホの類だが、一応、中央大陸の王の娘だった。 「あ!あああああ!これはミラージュ殿下ああああああああああああああ!!!」  ぎゃああああす!アリエールが悲鳴を上げ、おっさんが、フライングボディープレスみたいな五体投地をやらかした。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加