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ユノの部屋を出たところで、マリルカとアリエールがやってきた。
「先生!書簡を奪われましたのよ!」
「別にいいじゃんか。お父様からの私信でしょ?ってユノじゃんか。次どうするの?」
「おはようございますマリルカ。よく解らない話は使い魔に聞いた方がいいです」
ユノは、隣の魔王小屋の扉を開けた。
ふ、ふはは!ふははははは!
魔王は、朝っぱらから馬鹿笑いしていた。
「遂に!遂に完成したぞあの兵器が!これがあれば、たとえユノ様とて恐るるに足りん!おぎゃあああああああああああああああ!!」
恐るるに足りんという相手が普通に入ってきて、魔王は悲鳴を上げていた。
「何すか?!何なんすか?!」
べそをかいて魔王は言った。
「おはようございます。魔王、北の大陸に何かがあるということなので、ルバリエ先生に呼ばれました。力を貸せ魔王」
「で?!どうすんの?!ここ私のプライベートエリアですよ?!」
「だからよお、北の大陸に行きてえんだよユノは。走っていきゃあ大したことねえんだけどよ、このメンツで行くなら飛行艇だろ?ユノ飛行艇嫌いなんだってよ。だから、魔王、飛べねえ?北の大陸まで」
あ、スライムいたの?
「移動はともかく、内容はどってこない北伐でしょ?さっさと片して帰りたいのよ」
新学期から王女になったらしい娘か。マスカレード解除したようだな。
「魔王、お願い出来ないかしら?」
「勇者の嫁ではないか。貴様、体は大丈夫なのか?」
魔王に心配されて、フランチェスカは嬉しそうに言った。
「ええ。今安定期だし、王陛下とは、いい関係築きたいのよ。お父さんの立場なくなるし」
北の蛮族退治か。くだらんな。
「ならば、ふん」
魔王が指を弾くと、一瞬で北の大陸の只中にいた。
丈の短い草がまばらに生える、稜線の中ほどに揃って立っていた。
「相変わらず凄い魔力ですのね。ですが、ぎゃああああす!寒いですわ!スカートに寒風が!」
「今、気温が10度程度だ。アカデミーは温暖湿潤気候で、北の大陸は寒帯気候だからな。東に向かえば、いずれツンドラ気候になる」
誰もがスカート生足だったので、1人だけローブを着ている魔王がえらい憎かったようだった。
「魔王!そのローブをお貸しなさいな!1人だけ防寒対策していてずるいですわ!」
「私がローブ・オブ・ロードを着ていて何か文句でもあるのか貴様は!寒いというなら、その辺に城でも建てればよかろう!」
「あ、坂を上がったところに、建物があります」
1人だけ平然としていたユノが言った。
「まあ緊急避難ってことで、徴発してもよくない?」
「いいこと言いましたわマリルカ!これ以上寒いと、先生もお腹に障りますし!」
1人、アリエールは駆け上がっていった。
「どうでもいいけど、この建物何?何か塀がずっと続いてる」
「出来の悪い、万里の長城のようだな。あれは確か、北の蛮族の侵略に対する防御の為に築かれた塀だったな」
「ふーん。ちょうどいい建物ね?でも、塀がショボすぎる気もするけど。木の板1枚が延々と続いてるし」
魔王とマリルカは、そんなことを言い合っていた。
アリエールが塀に手をかけようとしたところで、
「そこな埒外者よ!我が威を受けよ!」
物凄い、筋骨逞しいおっさんが塀を飛び越えて現れた。
「我は偉大なるガイネウスが血を受け継ぎし戦士!我が名に懦声を発せよ!我はマリ」
「あ、マリウス」
んん?!?!
ぼそっと呟いたマリルカの声に、おっさんは反応した。
マリルカは、誰が見てもアホの類だが、一応、中央大陸の王の娘だった。
「あ!あああああ!これはミラージュ殿下ああああああああああああああ!!!」
ぎゃああああす!アリエールが悲鳴を上げ、おっさんが、フライングボディープレスみたいな五体投地をやらかした。
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