ゴー・ウエストは火薬味

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 なるほど、それがわざわざ来た理由って奴かい。  オババはそう言って、不機嫌そうにエメルダに視線を向けた。 「エメルダ。お前、言ってなかったのかい?」 「うん私もさっき聞いた。先生、結婚はともかく火薬は無理」 「最初から、変態おぼことそうなるとか何とも思ってないんだが、無理って、何だ?」 「簡単な話さね。火薬はたくさんあったんだが、中央大陸の商人に、粗方買われたのさ」  あー。あいつ等か。  俺の脳裏に、中央国家に蔓延る商人達の顔が見えていた。 「あたしゃ火薬ってのが嫌いだよ?あんなもん煩いだけさ。村の若い衆も、テイマー修行もしないで石掘りしてるのさ。あんなもん、テイマーの恥もいいとこだ。あんたはどうだい?」  まあ別に、このオババに嫌われたところで仕事に影響はないが、だからといって嘘を吐いて(おもね)ることもないなあと思った。 「火薬ですか。まあ、嫌う気持ちは解らないでもないが、俺の仕事上、どうしても必要なんですよ」 「そりゃあ、教員としてかい?それとも」 「まあ、両方ですよ。場合によっては、エメルダの為になるかも知れない」  それとも、って、やはりこの婆さん、俺を、いや、イーサンを。 「ふん。だったら、マラガ宮に行って、首長のとこに行っといで。エメルダ、案内しておやり」  まあ。それでも、オババは言った。 「あたしゃ、火薬は嫌いだ」  あー、そうすか。  俺は、何とはなしに立ち上がった。  翌日、昨日と同じ車の中には、別の男が座っていた。  彼は、ラビ村で御用商人をしている、アルス・パラストールという、俺と同い年か下くらいの少年だった。  アルスは、エメルダを露骨に気にしていた。  火薬が手が出せない理由は、恐らく硝石の丘を、経済協力連合に買われて手が出せないからだ。  恐らく、その一因は、西の大陸の商人達で。  一切無駄のない配置してんなオババ。エメルダと俺、しょうもない問題全てに関わっているのが、このアルスだった。 「間もなくマラガ宮に入ります。首長閣下は、基本的に魔力の強い人を認めるお方です。エルネストさんはプラチナですから、きっと、大丈夫ですよ?」  アルスは、自分の襟章(バッジ)を気にしていた。    ごめんな。俺解るよ。俺なんか、お前のカッパーのバッジ以下の、ブロンズなんだもん。  もし、このバッタモンのバッジを持たず、いつものブロンズバッジ付けてったら、きっとマラガ宮に行くことすら出来ないんだろうな。  どうやって、か。  きっと、どっか、まだ誰の管理下にもない硝石の丘を、探してたんだろうなあ。  まあ、アライダー・ファーストエビルの本読んで、グアノが何かは解ったんだけどさ。  校長が見付けたグアノはまあ、大体あの辺かな?って目星付くくらいには。  あ。急に、空気が変わった。  多くの人夫が、手に器具を持って、土を掘り返していた。  その表情は、妙に暗く、疲れてみえた。  何というか、温もりがねえなあ。  枯渇したのに、まだ掘ってるんだろうな。  ヒクイダチョウが鳴き、車はマラガ市に入っていった。
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