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ハッキリ言って、異常だと言っていい程の好条件だ。
この契約話が、本当に他の役員達も承知しているのか疑わしいくらいに。
チラリと上目遣いになり、ユウはその疑念を口にする。
「……聖さん、他のアーティストや俳優もこれと同じ条件で契約しているんですか?」
「まさか! これはお前だけだ」
「でしょうね」
ユウは溜め息をつくと、スッと立ち上がった。
そうして、おもむろに口を開く。
「今回のお話は少し考えさせてください」
「な、何故だ!?」
「お互い、もっと冷静になってから話し合うのが良いと思います。新しい機材をマンションに搬入したばかりで、オレも何かとバタバタしているんで……」
本当は『聖さんもそのワンマンを大概にしないと、社長業なんてやってられないですよ』と言いたいところだが、それはグッと堪えてニッコリと微笑む。
「このあと、零と会う約束があるんで。失礼します」
零の名前に、聖の眦がキリリと吊り上がった。
「何だと? あの金髪のガキと、これからもまだ付き合うつもりなのか?」
「はい。零は、一応オレの恋人ですから」
『零』は、本名を柊木・タルヴォ・零といい、ユウより十以上も年下の男性アイドルだ。
北欧の血が半分入る、高身長で子役モデル出身の青年だった。
一年前、番組でユウと共演した事を切っ掛けに、元々熱烈なユウのファンであった零の恋愛感情は一気にスタンピードを起こし、大暴走した。
結果、ユウと零の二人の仲は破局どころか破滅する寸前になったワケだが、その窮地からどんな奇跡が起こったのか二人は恋仲になり、今に至っている。
だが、大事な息子であるユウにストーカー行為を繰り返した末に、危機的状況にまで追い込んだ零の事を、聖は未だに許していなかった。
「ダメだダメだ! あんなガキとはもう付き合うな!」
聖は眉間に皺を寄せて、不快そうに吐き捨てる。
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