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「お前とあいつは釣り合わない。あいつは、頭が空っぽのミーハーな女どもにキャーキャー言われてんのがお似合いだ」
辛辣な物言いに、ユウは嘆息する。
「オレも一応、芸能人だからキャーキャー言われる時もあるんだけど」
そんな呟きは黙殺し、聖は諭すように言葉を掛けた。
「第一、お前の事だ。恋人関係になった以上は、これから先は零との仲を世間に隠す気は無いんだろうが、向こうはそうは行かないだろうよ」
意外なセリフに、ユウは不思議そうに首を傾げる。
「何でですか?」
「……それは、あいつがアイドルだからだ」
「それを言うなら、オレだって――」
「お前と、あいつは違う。お前は世間でいうところのシンガーソングライターだ。綺羅星の如く輝くトップ・スターで、孤高のアーティストだ。しかしあいつは、三人組ユニット『triangle』で活躍するダンスアイドルグループの一員だ。事務所も違うから、オレは根回しも出来ない」
「言っている意味が分からないんですけど」
すると、聖は顔をしかめて苦々しく呟いた。
「スキャンダルを、アイドルは何よりも恐れる。連中は、ファンが離れたらそこで終わりだからな」
「え?」
「畠山ユウと恋人だと……しかも同性カップルだと世間に知られるのはマズいだろうと、ライジングプロはそう考えるだろうという事だ」
尤もな指摘に、今更ながらユウはハッとした。
ここしばらく恋愛系スキャンダルとは無縁の生活を送っていたから、そういった考えに至らなかったが。
だが、確かに、ファン離れを気にするアイドルにとっては、致命的になるかもしれない。
実際に、恋人の存在を明かしただけで炎上し、事務所をクビになるアイドルもいるのだ。
ライジングプロはどうだか知らないが、少なくとも、ジュピタープロダクションよりはそういった色恋沙汰には厳しそうだ。
「オレは……どうしたらいいんだろう」
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