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2日後。
葵が教習所に出勤すると、沢山の人達が葵を祝福してくれた。
一番喜んだのは杏奈だった。
杏奈は泣きながら葵に抱きついた。
女性陣はこぞって婚約指輪を見たがった。
まるで見世物だな…
「これが650万円の指輪かぁ〜。次元が違い過ぎるぅっ」
フロントの女性スタッフたちが羨ましくため息をついた。
どこからか婚約指輪のデザインと金額が出回ってしまっていた。
「……うん…」
苦笑いしながら葵は真面目に仕事をする。
デスクに貼った付箋を確認しながら、忘れている仕事が無いかチェックする。
フロントのスタッフたちは葵に協力的で、記憶障害の症状が出ても皆きちんと対応してくれた。
葵はそれが嬉しかった。
葵の仕事を真面目に取り組む姿勢が自然と受け入れやすい空気を作っていたのもあった。
もう教習指導員は出来ないが、教習所で働き続ける事は出来る。
杏奈もいてくれる。
とても心強い環境だった。
その夜。
葵とマコトは二人で叔父と叔母の家に行き、婚約した事をきちんと報告した。
叔父も叔母も、やっと心から祝福出来るようになり、涙を浮かべて喜んでくれた。
「入籍日はまだ決めてませんが、これからは俺の家で葵と一緒に生活していこうと思います」
マコトが真剣な顔で叔父と叔母に伝えた。
「真言君。葵の事…、よろしくお願いしますね…。こんな体で、真言君に負担が沢山掛かってしまうと思うけど…」
「それは問題ありません。叔母さんも知ってると思いますけど、葵も色々と工夫して一人で出来る事が増えて来ています。もちろん、これからも叔父さんと叔母さんの協力が不可欠ですが、出来る限り二人で頑張っていきますので」
「叔父さん、叔母さん。お父さんとお母さんの代わりに私を育ててくれて本当にありがとう。これからは真言君の家に住むけど、またここに来ても良いよね?」
「当たり前じゃないっ。ここは葵の家なんだからっ。いつだって…好きな時にいらっしゃい。…部屋もそのままにしておくから」
叔母は涙を浮かべ、言葉を詰まらせながら微笑んだ。
「葵の実家はここなんだよ。堂々といつでも帰っておいで。真言君も同じだからね。遠慮せず、いつでも来なさい」
叔父も目を赤くして微笑んだ。
「ありがとうございますっ」
マコトは深々と二人に頭を下げた。
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