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マンションに戻り、久しぶりに二人でワインを飲んだ。
「真言君。私、北海道行きたい…」
「北海道?」
「うん。小樽…」
「あぁ。オルゴールね?」
マコトがナッツを頬張った。
「オルゴールも見たいし…、前に真言君が言ってた私の食べたい物…。どこでも連れて行ってくれるんでしょ?私、北海道って行った事無いし美味しい物も沢山あるから、小樽だけじゃなくて、美味しい物食べ歩きしたいなぁって…」
葵が小さくカットしたハードチーズのコンテを食べた。
「うふふ…。このコンテを食べに、フランスも行きたい…。チーズに限らず本場のフランス料理も食べたいなぁ」
「良いね!じゃぁ、順番に実現して行こう」
「まずは北海道、連れて行ってくれる?」
「OK!一週間くらい休み作って、北海道一周してこよう」
マコトがスマホを取り出し、茜にLINEをした。
「少し先になっちゃうけど、茜が上手くスケジュール調整してくれるからさ。楽しみに待っててよ」
「うんっ。ありがとう」
「じゃぁさ…。新婚旅行をフランスにする?ヨーロッパ全部回っても良いしね〜」
「贅沢っ」
「贅沢出来る程、俺も稼いでるのっ」
「うん。知ってる」
「葵も頑張ってるしな。働かなくたって俺一人の稼ぎで生活出来るって言うのに…。働きたいんだろ?」
マコトが優しい表情で葵を見つめた。
「うん。私は真言君を頼って支えてもらってるのも自覚してるよ。でも、私の人生として、働いて稼ぐって力もつけたいの。真言君みたいには稼げなくても、それも一つの私の生き甲斐になるから…」
葵がグラスに半分程残っていたワインを一気に飲み干した。
「うん。葵がそう考えてるなら俺も協力するよ。でも、ムリし過ぎるのはダメだからね」
瑠奈の事が頭を過った。
瑠奈は仕事のストレスが原因で鬱病を発症した。
ましてや障害を持った葵が健常者と同じ様に働こうとすれば、ストレスも多くなるはずだ。
マコトはこれからそれらも気を付けて葵を支えて行くつもりだった。
「ありがとう。それでね、阿部マコトのファンクラブに入会して、来年は杏奈と自力でライブのチケットゲットするっ!そして自分の稼いだお金でチケット代払って、グッズ買うっ!」
少し顔が火照った葵が右手をギュッと握った。
薬指の婚約指輪がキラキラと輝いて見える。
そしてまたグラスにワインを注ぎ、飲み始めた。
「そりゃ頼もしい。…葵、飲み過ぎ。顔が赤くなってるよ」
マコトがそっと葵の隣に座り、抱き寄せた。
「こんな量じゃ…飲み過ぎに入らないって…」
「ははっ…。酔っ払ってるじゃん」
マコトが葵の顔を覗き込む。
「真言君っ。近いっ」
「うん。わざと近付けてる」
そのままキスをする。
「んっ…」
「そして…」
葵をそのまま抱き上げ、歩き始めた。
「真言君っ!まだ飲み途中っ…」
「はいっ、ダメぇ〜っ。こっからは俺の時間〜っ」
「何それぇっ!」
葵が足をバタバタさせてマコトの肩の上で暴れ始めた。
「静かにしろ、酔っ払い。こんな酔っ払いを俺が放って置くと思ってんの?」
マコトは先程から少しずつ酔っていく葵の姿に気持ちが高揚し、抑えきれなくなっていた。
無事に婚約し、これから毎日葵が家にいる。
その幸せも手伝って、心が踊りまくっていた。
「下ろしてぇっ!変態〜っ!襲われる〜っ」
「変態扱いかよ…。その変態に襲われたいのは葵だろ…」
葵は思った以上に酔っているようだ。
それに構うこと無くマコトは葵を寝室に運んだ。
そして暴れ続ける葵をなるべく体が痛くならない様にベッドに寝かせる。
更に間髪を入れず葵にキスをする。
優しく、熱く、しつこく、激しく。
葵の右手を押さえ付け、バタつかせる足もマコトの足で押さえ付けた。
「んっ…」
身動きを取れなくされた葵はひたすらマコトのキスを受け入れるしかなかった。
もちろん葵はマコトのキスを欲しがっている。
右手を葵の髪に滑り込ませ、髪を強く握る。
主導権は完全にマコトにあった。
「んんっ…」
眉根を寄せて悩ましい顔をする葵を無視し、ひたすら熱いキスを続ける。
「んん〜っ…」
葵の甘えた声にマコトは更に興奮してしまう。
試しに葵の右手を解放してやる。
するとその手はマコトの髪を掴んだ。
『もっと欲しい』
葵の合図だ。
葵はマコトを欲する時、必ず髪を掴む。
葵のスカートを捲り上げ、ショーツの中に手を入れる。
「すげぇビショビショ…。いやらしい…葵…」
マコトがわざと葵の耳元で囁いた。
「いやらしくさせたの…誰っ…」
恥ずかしそうに葵が囁いた。
「俺しか…いねぇだろっ…」
今までに無い程の喜びと嬉しさと幸せに包まれながら、その夜二人は何度も何度も愛を語り合い、何度も何度も愛し合った。
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