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初めて俺っちが主役になっちまった。
それも仕方のないこと。
今回は俺っちが主役の物語だからだ。
俺っちともあろう者がこんな同義反復を繰り返しているには訳がある。
俺っちがひそかにめんこく想うハナ。
今ハナの兄貴の人間、彰人はいとこの理子とめでたく結婚を前提の同棲を始めた。
これまでの怒涛の経緯があるから、俺っちもハナもそれはもちろん喜んだ。
ところが、二人の仲睦まじさにあてられたハナが、こともあろうに自分も恋猫を探そうなどと思いはじめたのだ。
それで、俺っちはハナのもとからそっと姿をくらましたってわけだ。
え、なぜ姿をくらますかって?
両想いならいいじゃんか、って?
それは、俺っちの美学が許さねえ。
俺っちは本当に愛する女は遠くから見守り続ける主義なんだ。
結ばれてはならねぇ。
いや、俺っちは野良と思われがちだが、実は人間の家にいる。しかし外猫と言っていい。よく家出する。
だが、家にいるとオヤジの好きな『寅さん』ばかり見せられる。そのうちに知らず知らず、結ばれちゃなんねぇという美学ができちまったのかも知れねぇな。
ついでに言っておけば、俺っちのトラは模様から来ているのではなく「寅次郎」から来ている。ま、模様も茶トラだが。
ま、それはともかく、このエブリスタウンがただの街じゃねぇってことは足を踏み入れた瞬間に分かった。
一見普通の店やらシネマやら公園に面した海もある実にいいところだ。
だが、このタウンの住人たちは夢ばかり見ている。
夢であふれ返った街なんざ、俺っちのようなニヒルな猫には性が合わないのさ。
註:こちらは、『猫とイケメン・続猫とイケメン(アルファ・ビルヂング編)』
https://estar.jp/novels/25939305
メインキャラの一匹、「外猫のトラ」の「エブリスタウン物語」編。
「外猫のトラ」は私の最愛の自作キャラです🥰
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