13人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、そこの余所者」
「クロ、車屋のクロではないか」
「何をいっちょる。おりゃは魚屋の黒だ」
『道理で』
一瞬黄昏(誰そ彼)時の黒猫は俺っちのダチ公の車屋のクロかと見間違えたが、クロのような精悍さは微塵もなく、ぶってりと太っている。
ちなみに「俥屋」ではなく「車屋」が正解。漱石先生の明治ははるか遠くになりにけり、だ。自動車整備工場の猫さ。
「おめえ、今『どいつもこいつも夢ばかり』とかすかしたことを言ってたが、おめえだってそうじゃないか」
「なんだと?」
「おりゃには見える。おめえの背後に超別嬪の雌猫がよ」
「なに?」
最初のコメントを投稿しよう!