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夢を見るのも悪くない。
俺はその素朴なイルミネーションをじっと眺めた。
ハナと彰人を追いかけて、丸の内のシャンパンカラーもけやき坂からの光に浮かぶライトアップされた東京タワーも見た。青の洞窟も今度は理子も含めて一緒に行く。
でも、このイルミネーションは、綺麗さよりも夢がある。
俺っちはそこで俺っちを見つめるハナの夢を見ていた。
ハナ、気立てが良くて心が素直で、そのくせ意外とはしっこくて度胸があって、野性味もある──。
俺っちの永遠のマドンナ、いや違った。それじゃうちのオヤジの好きな映画と同じになっちまう。
そろそろほとぼりも冷めただろうさ。ハナはもう、恋猫探しなど忘れて、彰人が仕事の間は理子と遊んでいるに違いない。
理子もとうとう、ハナへの嫉妬を捨てて、あんなにハナをかわいがるようになったんだ。
明日は帰るか。あまり間を空けるとハナが寂しがるしな。
俺っちはまたニヒルな笑みを心で浮かべたのだった。
(おしまい)
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