25人が本棚に入れています
本棚に追加
隠れ家に着くや、奥の方に布団を見つけた。
霊斬は千砂を起こさないように寝かせ、布団をかけてやると、声をかけられる。
「霊斬」
「起きていたのか」
霊斬が苦笑する。
「途中からだけどね」
千砂がくすっと笑う。
「悪いね。わざわざ送ってもらっちゃって」
「気にするな」
霊斬は微笑すると、隠れ家を後にした。
その帰り道、霊斬は思う。
どんなに辛くても俺はこの仕事を続ける。けれど、それ以上に、最後まで生き抜いてみせる。
周りの言うことなんざ、関係ない。
信じられる者だけと、ともに生きればいいのだ。
感情すべてを引き受けて呑み込み、嵐となって、生き抜くのも悪くはなかろう。
悪と言われても、はたまた英雄と呼ばれても、俺にはどうでもいいこと。
ただ独りで抗ったものがいた、と誰かの記憶に残るくらいでちょうどいい。
今さら多くを望むわけじゃあない。なにもかもを失ったのだから、望みなんぞ最初から要らん。
感情を犠牲にして得られるものなどなにもない。けれど、そうせずにはいられなかった。
霊斬は夜空に浮かぶ満月を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!