第一章 霊斬の知られざる一面

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「では、とあるお方についてお尋ねします。あなた方とは、どういったご関係ですか?」 「主とは義兄弟に当たる。だが、その方の母がどうも地位に固執しているようだ。主も私も彼らに、憎しみがある。しかしそれを、どこへ向けたらよいか分からぬ」 「そうでございましたか。承知いたしました。それからひとつ、確かめたいことがございます」 「なんだ?」 「人を殺めぬこの私に頼んで、二度と後悔なさいませんか?」 「もちろん。依頼内容は賊の退治と、できればこの状況の打開だ」 「承知いたしました。決行の際に、私の邪魔だけはなさらぬよう」  霊斬は言葉こそ丁寧なものの、喧嘩を売った。 「分かっておるわ」  その言葉が気に()わなかったのだろう。園田は刀を持って、店を後にした。      霊斬は園田が店を去った後、今回の依頼について考えていた。  ――賊の退治はともかく、状況の打開なぁ。  霊斬は一人、溜息(ためいき)()いた。 「失礼いたす!」 「はい! ご用はなんでございますか?」  霊斬は奥の部屋から出て、訪れた武士に丁寧に対応した。 「この店で一番よい出来の刀を二本、買いたい」 「この店の刀のみならず、装飾品すべて一番の出来にございます」 「ならば、手近なものを一本見せてくれ」
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