第一章 霊斬の知られざる一面

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 その帰り道、霊斬は立ち並ぶ店の間に、人だかりを見つけ、軽い気持ちで見にいく。  小料理屋の前を通りかかると、岡っ引きと定町廻り同心が駆けつけていた。亡くなったのはこの店の看板娘らしい。 「あいつだよっ!」  どこかの店の女将らしき女が、叫んで一人の男を指さす。  その男は青い顔をして慌てて逃げ出した。  動こうとした岡っ引きを、同心が引き止める。 「追い駆けねばならんでしょう?」  岡っ引きは同心を不思議そうに見つめた。 「それは許さん」  岡っ引きに言い放ち、同心は手を叩いて皆の視線を奪う。 「しかし……」  岡っ引きが抗議しようとしたが、同心はそれを無視した。 「騒がせて申しわけない! この件については、見なかったことに! こんなことで足を止めているわけにもいくまい。ささ、早く戻りなされ!」  ――人の命がひとつ、消えたというのに。その扱いはなんだ? 遠回しな口封じとは、よほどなにかを隠したいようだな。  そんな同心を不思議に思いながら、霊斬は人の波に紛れた。    店に帰って刀部屋に入った。  水につけておいた刀を取り出し、砥石で何度か研ぐ。そのたびに出来栄えを見ながら。  だいたいの仕事を終わらせ、霊斬は休憩していた。すでに、日は傾き始めている。
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