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しばらくすると、戸を何度か叩く音が聞こえた。
引き戸を開けると、一人の武士が立っていた。
「幻鷲殿とお見受けする。ひとつ、頼みを聞いてもらえぬか」
「では、こちらへ」
霊斬は武士を部屋に上げた。部屋の真ん中に、霊斬とその武士は向かい合って座った。
「それで、頼みとは?」
「この刀を直してほしい」
床に置いていた刀を差し出した。
「拝見いたします」
霊斬は刀を手に取って鞘を抜き、刀身に目を走らせる。
丁寧に扱っているのはすぐ分かった。刀は武士の魂という。それほど大切にしていることが、ひしひしと伝わってくる。
「承りました。七日後に、またお越しください」
霊斬は刀を仕舞うと、深々と頭を下げる。
「こちらの都合ですまぬが、お代は先払いでよいか?」
武士は袖から小判五両を出し、差し出してきた。
「はい」
「では、これで」
「お待ちください。こんなにはいただけません」
霊斬は慌てて小判を返そうとする。修理ならばここまで高額にはならない。銭と銀があれば十分。
「そなたが幻鷲だから、これほどの額を払うのだ」
「……分かりました」
霊斬は渋々、小判を受け取る。
「では、失礼する」
霊斬は武士を見送る。
預かった刀を一瞥し、外に出た。
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