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店に戻り、少し眠った。
預かった刀を直しながら、違和感を覚えた。
――どうしてあの武士は、名乗りもせずに修理を依頼した?
刀の状態もそこまで悪くない。霊斬が七日と猶予を持たせたのは、その武士が怪しかったせい。
それに修理だけで、あれほどの金を出したことも気になる。
武士の放った一言からも、霊斬の別の顔を知っているような気がした。
――疑問はいくつもあるが、そればかりを考えるわけにもいくまい。
霊斬は刀を直す手を早めた。
刀を直し終えて、伸びをすると霊斬は夜が明けていることに気づく。差し込んでくる日の光を浴びて、僅かに目を細めた。
よくあることなので気にならない。少ししか寝ていないので、さすがに疲れが溜まる。眠気覚ましに顔を洗って、仕事を再開した。
平穏な世だからこそ、嫉妬、憎悪といった闇が表面化してきているのだろう。
下手人、斬られた者、遺された家族。下手人はもちろん危険だが、さらに危険なのは、遺された家族ではないか。
下手人を憎むだけならいい。手を下せば、必ず後悔する。罪の重さに耐えきれず、自死を選ぶしかなくなる。いいことなどひとつもない。自分のことが可愛い人が大半だから、心が保てなくなってしまう。
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