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ダンジョン、初めての戦闘
「進んでみましょ」
「う、うん」
あたしが先頭、後ろを栞ちゃんが歩く。
緊張感とゲーム世界を冒険している感じは、今までの悪夢みたいなダンジョンとは違う。本当にダンジョンを冒険している気分。
「さっきはディティールが甘いとか言っちゃったけど、実際にこうして歩くといい感じねー。いかにもダンジョンって感じで雰囲気あるじゃん」
思わず感嘆すると、上機嫌なBGMがアップテンポになる。マジでダンジジョンマスターのメンタル直結らしい。
「芽歌ちゃん、なんか出た!」
「お、ぉ!?」
びょんびょんっと水玉のゼリーみたいなものが跳ねながら迫ってきた。
スライム型モンスターの出現ね!
『バウンドジェリーA、B出現』
目の前にウィンドゥが赤背景でポップアップ。
「えっ!? どど、どうすればいいんですかー!?」
栞ちゃんはプチパニック。あたしの後ろに隠れる。
『魔法使いは魔導書を開き詠唱することで、魔法を励起できる』
「親切なチュートリアル……」
初心者に優しい。
『前衛の戦士はリアルタイムバトルで攻撃、またはアイテムの使用も可能』
眼前にチュートリアルが浮かび上がる。
「攻撃すりゃいいのよ!」
ゲーマーの血があたしを突き動かす。
跳ねるスライムめがけ、タイミングをあわせてドリルランスを叩き込む。
『ミス』
ピロリン♪ ムカつく硬貨音でスライムが避けた。
「あっくそ!?」
初撃を外した。すばしっこいスライムなんてアリ!?
ビョーンと壁に跳ね返るトリッキーな動き。
攻撃が当たらない、意外とムズいっ。
迫る二匹目に向けてランスを振り回す。側面でヒット。ビッ!と衝撃音がした。
でも与えたダメージは2。
モンスターの頭上にはHP残量を表すバーが浮かんでいて、それが半分ほど減少する。
「魔導書、これを読めばいいんですね!? えぇと『炎の精霊よ、汝に命じる、わが呼びかけに応じ、神聖な火炎の神威を示せ、メラリア』?」
最後が疑問形だったけど、栞ちゃんは魔導書を読み上げた。すると炎のボールが浮かび上がった。
「あわわ、なんか燃えてる!?」
『ターゲットを決めて弾くように放て』
「え、えいっ!」
バレーボールの要領で弾くと、炎のボールは矢のように飛んだ。
炎の球はバウンドジェリーAに吸い込まれるように命中、爆発。
『スキル補正、ホーミング』
なるほど、追尾する魔法ね。
光の粒子になってモンスターが消滅した。
『ダメージ10、バウンドジェリーAを倒した』
「や、やったよ芽歌ちゃん!」
「ナイス栞ちゃん!」
あたしも負けちゃいられない、今度は倒す!
『命中、クリティカル!』
バウンドジェリーBを貫くと手応えがあった。ダメージ8。
光の粒子になってスライムが消える。
「倒した!」
「やったね!」
ふたりで思わずハイタッチ。
経験値云々の表示の後にアイテムが床に転がった。
「ドロップアイテムだわ」
『回復薬 ×1』
「お薬……みたいですね」
栞ちゃんが拾い上げた。青いドリンク瓶だ。
「飲めば元気になるのか? 飲まんけどな」
「……ですよね」
思わず二人で苦笑する。
中身、大丈夫か? 怪しくて絶対飲みたくないわ。
<つづく>
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