315回目の転生

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 家の裏側は手入れされておらず、蜘蛛の巣らしきものや俺の身長を優に超えている長さの雑草が生えていた。  そんな雑草や蜘蛛の巣を手でかき分けながら俺は奥へ奥へと進んでいった。  幸い家の裏側には森が広がっており、人が一人もいなかったので俺は見られる心配をせずに済んだ。  ……今思えば、家のすぐ裏なのになぜそこまで手入れされていなかったのかをもっと考えるべきだったんだが、後悔しても後の祭りだった。  そして何も考えず森に入っていった俺の前には突然、巨大な生き物が立ちはだかった。  それはイノシシによく似た生き物だが、体毛の色が毒々しい紫色だった。 そのイノシシはこちらをキッと睨んでいる。  そんな敵対心むき出しのイノシシを見た俺は流石に焦った。  この世界に転生したのはおそらく今回が初めてだし、次もこの世界に転生できるのかは定かではない。というかそもそも、また転生出来るのかもわからない。だから今回ここで死ぬのはかなりまずい、と。そう考えたからだ。  何しろ魔法っぽいあれはまだ使えないし、この体じゃ戦おうにも力が足りないのだ。絶望しか無い。  ……とりあえず戦うのは無理だ。試すまでもない。  となると最善策は…「逃げる」になるわけだが…いくら似ているとはいえ、前の世界のイノシシへの対策が使えるのかはわからないし、賭けだな…。  ………仕方ない。他に策も思い浮かばないしやるしかないか。  そう思って腹を括った俺はイノシシを刺激しないように気をつけながら、少しずつ後ろに下がった。  すると意外とあっさり離れることができ、もう少しで森から家の裏あたりに戻ることができるところまでやって来た。  これはもしかして、案外逃げれちゃったりするのかもしれない。  だがまあ、当たり前というかなんというか。イノシシはそんなにあっさりと逃がすつもりは無かったらしく、空に向かって何かを叫ぶような動作をした。  実際には声は聞こえなかったが、明らかに何かを叫んでいたのはわかった。  俺はそれを見て警戒するが、警戒したところでそれは防ぎようが無かった。  イノシシの前に小さな火の塊のようなものが現れ、イノシシがもう一度叫ぶような動作をするとその火の塊は俺に向かって飛んできた。  これは…かなり、まずい。  何せ俺の周りには草がある。俺自身に当たらずとも、草が燃えることで俺は焼け死ぬことになる可能性が高い。  これは……詰んでるなぁ……。  俺は瞬時にそう考えて死ぬ覚悟をした。  欲を言えばできるだけ一瞬で終わらせてほしい。何度も死を経験しているとはいえ、望んで死を選んだことなど一度もない。普通に痛いの嫌いだし。慈悲とかは無いのかな? 「『ハス・リターレ』」
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