315回目の転生

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 俺がそんなことを考えていると、不意に後ろからそんな声が聞こえてきた。  俺が誰だ?と考えていたのも一瞬。  俺の前にいたイノシシが、突然降ってきた大量の水の中に閉じ込められた。  そして俺に向かって放たれた火の玉にも、どこかから出てきた水が降ってきて火の玉は一瞬で消えてなくなった。  イノシシの上から降った水は、イノシシが丁度入るくらいの大きさの水槽に水を注いだように降り注ぎ、溜まりきった今はきれいな直方体になっていた。  そしてその水は瞬く間に氷へ変化した。  なので当然中に入っていたイノシシは凍ってしまった。  その突然で、しかもたった数秒の出来事に、俺は目を疑った。  やっぱりどう考えても、前までいた世界の常識じゃあり得ない。先ほどまででも俺の頭の中では、ほぼ確定していたことではあったが、やはりここは俺の過ごしてきた場所ではないどこからしい。  俺がそんなことを考えていると、後ろから聞こえていた声の持ち主が姿を見せた。  その人は背の高い男の人で、高そうな服を着ている。更に一つ一つの所作に品があった。  この世界に貴族という概念があるのかは知らないが、もしあるなら確実に貴族だと言い切れると思う。  そんな人がなぜこんなところにいるんだろう?と思ったものの、理由はわかるわけもなく、俺はただその人の様子を観察することしかできなかった。  その人は俺の横を通り過ぎ、先程凍らせたイノシシのもとへとゆっくり歩いていった。  何をするのかな、と思って見ていると、突然その人は指をパチンと鳴らした。そしてその音と同時に、凍結イノシシは跡形もなく消えてしまった。なんとなくわかってたけど容赦ないなこの人。  そんなあり得ない光景を見ても、もはや驚きよりもそんな感想が先に出てくるようになった自分に気づき、少し怖くなっていると、不意に体がひょいと持ち上げられる感覚がした。  え、と声を発する間もなく俺はどこかへと連れて行かれる。  何なんだ、本当に。  意味がわからず抵抗することすら忘れてしまう。  この場にいたのは俺を除いて一人だけ。  顔を見ることはできないが、服装だけ見る限りさっきの男の人で間違いないだろう。  ただ、俺を連れて行く理由はよくわからないが。  この人多分金持ちだろうから誘拐して身代金もらってガッポガッポ、とかする必要ないと思うし。  俺がそんなことを考えていることなどつゆ知らず、男はそのまま俺をどこかへ連れて行った。  前途多難だなぁ。一応、さっき生まれたばっかりなのに。  俺はどう足掻いても逃げられないことがわかったので、諦めてそんなことを考えていた。
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